第325章 琴の登場2

猿王は顔の血を綺麗に拭い、乱暴に琴の白い肩を掴んで、急いで言った。「彼はもう白箐箐のことが好きなんだ。オスは簡単に心変わりしないものだ。」

琴は急に表情を変え、猿王を力強く押しのけ、冷たい声で言った。「私の魅力を信じていないの？」

猿王は唇を噛みしめ、苦しそうに言った。「もちろんそんなことはない。誰も君の誘惑に抵抗できない。だから私は君を彼らの前に出さないようにしているんだ。」

琴の表情が少し和らぎ、自負げに言った。「私が欲しいオスは、手に入らないものなんてないわ！」ただし…彼女の記憶の中で薄れていったあの異端者を除いて。

なぜか何年も前の出来事を思い出し、琴は猿王との会話を続ける気分ではなくなり、背を向けて横になって眠った。

……

翌朝、薄い青いベールを纏った一人のメスが街頭で全ての人々の注目を集めていた。

その布地は萬獸城の獸人たちが見たことのないもので、透けるか透けないかのような生地が朝日に照らされて淡く輝き、彼女の雪のような白い肌をより一層引き立てていた。青いベールで顔の大半が隠されていても、外に見える上がり気味の妖艶な瞳は人々の視線を釘付けにした。

遠くにいる獸人たちは白箐箐だと思ったほどで、そんな雪のような肌を持っているのは彼女だけだったからだ。しかし近くで見ると違いが分かった。白箐箐は大きな目尻の下がった可愛らしい目をしているのに対し、彼女の目はそれほど大きくなく、目尻の上がり具合が非常に妖艶で魅惑的だった。

さらに、彼女は深い青色の美しい瞳を持っており、誰かを見つめる時、その目の中には底なしの渦のようなものがあり、人の魂さえも吸い込みそうだった。

それは矛盾した目で、生まれながらにして魔力を帯びているかのようだった。

「あなたは誰？萬獸城に新しく来た方ですか？」虎王城の門番は魅了されながらも、職務を全うしようと彼女を止めた。

「私は猿王の伴侶の琴です。ほとんど外出しないので、皆さんご存じないでしょう。」琴の声は清涼な海水のように心地よく、もし門番のオスが既に絆の力を持っていなければ、美しいメスと話せた幸せで気を失っていたかもしれない。

琴は優しい声で続けた。「最近、猿王と白箐箐の伴侶との間に誤解があるようで、私がそれを解決しに来たのです。」

二人の門番は目を合わせ、暗黙の了解で一人が城内に走り、文森に知らせに行った。