第345章 唐雅心を懲らしめる

それに、彼女は復讐のために自分を犠牲にすることは絶対にないでしょう。今は家族も恋人もいるので、行動する際には必ず結果を考えなければなりませんから。

顾寧は時々隣の個室を透視して、彼らの行動を観察していました。

しばらくすると、唐雅心が席を立って出て行きました。顾寧は彼女を見つめ続け、トイレに向かうのを見て、チャンスが来たと思い、冷少霆に一言告げてから、自分もトイレに向かいました。

顾寧がトイレに着くと、個室の外には誰もいませんでした。顾寧は透視で唐雅心のいる個室を特定すると、空間から取り出したクレンジングオイルを、唐雅心のいる個室のドア前の床に零し、向かいの個室に入りました。

1分も経たないうちに、唐雅心が出てきました。クレンジングオイルが零してある床を踏んだ途端、足が滑って悲鳴を上げ、後ろに倒れていきました。

そして「ドン」という音とともに、唐雅心は個室の中に倒れ込み、背中が便器の上に横たわる形になり、流れている水が彼女の背中の服を濡らしていきました。

唐雅心の騒ぎに、他の個室にいた人々が次々と出てきました。顾寧も出てきました。

「お嬢さん、大丈夫ですか!私が助けます······あっ······」

しかし、ドアの外に出たとたん、足が滑って悲鳴を上げ、唐雅心に向かって倒れ込み、彼女の上に強く落ちかかり、二度目の衝撃を与えてしまい、彼女は再び悲痛な叫び声を上げました。

「あっ!すみません、すみません、わざとじゃないんです。ただ助けようと思って。」顾寧は驚いた兎のように慌てて立ち上がり、謝罪しました。

顾寧は心の中で嫌悪感を覚えました。唐雅心を懲らしめるために、トイレで倒れ込むという大きな犠牲を払ったのです。下に唐雅心がクッションになってくれたとはいえ、ここはトイレですから、考えただけで吐き気がしました。

唐雅心はさらに酷い状態で、痛みと怒りと吐き気に襲われ、立ち上がろうとしましたが、痛みで力が入りませんでした。

唐雅心の叫び声が大きかったため、トイレから近い個室にいた人々も聞こえ、何が起きたのか見に来ました。

冷少霆と齊子越も出てきました。

冷少霆は純粋に何が起きたのか見たかっただけですが、齊子越はその声が唐雅心のものだと分かっていました。