蒋仲宇は少し困っていた。冷少霆がこの件について話さなかったのは、意図的に隠していたのか、それとも何か別の理由があるのか分からなかったからだ。話してしまって良いものかどうか迷っていた。
「蒋さん、早く話してくれ!」冷おじいさまが催促した。
蒋仲宇は考えた末、冷少霆がこの件を意図的に隠すはずはない、話す必要がないと思っただけだろうと判断し、こう言った。「浩揚が誘拐された件については、皆さんご存知ですよね?」
「ああ、知っているとも!」
数人が応じた。
冷少勳が言った。「浩揚を救出したのは少霆兄さんだよね!」
「橋の下から飛び出して秦會群を制圧した女性が、少霆の彼女なんですよ!」と蒋仲宇が言った。
「えっ?」
一同は驚愕した。秦會群を制圧したあの女性が冷少霆の彼女だとは、誰も想像していなかった。
これは、すごすぎる!
「私は本人を見ていませんが、正華から聞いた話では、その女性は浩揚を救った後に体力を使い果たして気を失い、正華が病院にお礼を言いに行った時、少霆がその女性のベッドの傍らで手を握っていたそうです」と蒋仲宇は説明した。
手を握っていた?皆は疑う余地もなく、彼女が冷少霆の彼女に違いないと確信した。
冷少勳は急いで携帯を取り出し、保存していた動画を再生して見直した。
橋の下から現れた女性の顔は見えなかったが、その身のこなしは見るたびに驚かされるものだった。
もともと冷家の本家は、冷少霆の彼女は普通の家庭の女性だと思っていたが、まさかこれほど凄腕とは想像もしていなかった。
もしかして、女性兵士なのだろうか?
しかし冷おじいさまだけは知っていた。冷少霆の彼女は、ただの高校三年生の女子生徒に過ぎないということを。
冷おじいさまは改めて、冷少霆の彼女は自分が想像していた以上に並々ならぬ存在なのではないかと感じた。
とにかく、皆が冷少霆のまだ見ぬ彼女に衝撃を受け、軽視できない存在だと認識した。冷家の本家は、この冷少霆の彼女が一体何者なのか調べる必要があると考えた。
そしてこの時、冷少霆はすでにF市に到着していた。
顾蔓と顧晴は顧家の人々以外に親戚や友人もあまりおらず、誰かを訪ねて年始の挨拶に行くこともなければ、誰かが来ることもない。夕食は家族だけで、高熠と乔娅も一緒だった。