第584章 唐雲帆を好きな女

「唐家の次男の女と娘でなければ、どうして唐家に現れるはずがありますか！特に、あの女の子は唐家の次男にそっくりなんです」とその男は言った。

突然、その二人の男の隣のテーブルに座っていた女性が立ち上がり、二人の男の前に来て、不機嫌な態度で問いただした。「あなたたちはどうやって唐家に母娘が来たことを知ったの？あの女の子が唐雲帆に似ているということも？」

顾寧はその様子を見て、おおよその状況を察した。もし彼女の推測が間違っていなければ、この二人はわざとこの女性に聞かせるために話していたのだ。明らかに計画的だった。

しかし、この女性は誰なのか！なぜ唐雲帆のことにこれほど反応するのか？そして相手はなぜわざと彼女に聞かせたのか！何かドロドロした事情に巻き込まれたようだ。

「私の友人が唐家で働いているから、当然知っているんですよ」と男は言った。つまり唐家から漏れた情報だということで、嘘のはずがないということだ。

顾寧は眉をひそめた。これは明らかに仕組まれた事で、唐家側から漏れた情報のはずはない。だから顾寧は相手が唐家からの情報だと言っても信じず、むしろ唐德明の陰謀だと確信を深めた。

その女性はそれを聞いて、さらに表情を曇らせたが、それ以上は何も聞かず、自分の席に戻った。

「雪琴、これって嘘じゃないの？もし唐雲帆の娘なら、なぜこれまで何の情報もなかったのに、突然現れたの？」とその女性と一緒にいた女性が言い、この件の真偽を疑問視した。

「もし本当でなければ、どうしてこんな噂が広まるはずがないでしょう！」雪琴と呼ばれた女性は言い、明らかにその話を信じていた。

この女性こそ、唐煒雍が唐德明に命じて顾蔓と顧晴の情報を漏らさせた相手、馮雪琴だった。

馮雪琴は海市の三流名門、馮家の令嬢だった。

唐おばあさまが存命中、馮雪琴の母親と親友で、若い頃によく冗談で親戚になろうと言い、馮雪琴と唐雲帆を結びつけようとしていた。そのため馮雪琴はそれを心に留め、若い頃から自分を唐雲帆の婚約者だと思い込んでいた。

しかし唐雲帆は彼女に全く興味を示さず、常に避けていた。

時が経ち、彼女と唐雲帆の関係は成就せず、ようやく唐雲帆の婚約者を名乗るのをやめただけだった。