第606章 私と一晩を

劉興奇はニヤリと笑い、淫らな様子を隠そうともせずに言った。「一晩付き合ってくれ」

「あなた······」馮雪琴は憤慨した。この男と寝るなんて、吐き気がする。

彼は見た目が醜いだけでなく、体型も良くない。最も重要なのは、その方面で、少し異常があることだ。

彼の妻はその異常な性癖に耐えられずに離婚したのだ。

実際、劉興奇はそれほど醜くはなかったが、唐雲帆のようなハンサムな男性と比べると、かなり見劣りするだけだった。また、馮雪琴自身が美人だったため、劉興奇を見下していたのだ。

「俺たち、以前にも寝たことがあるじゃないか。何を恐れることがある？それに、誰にも言うつもりはないよ」と劉興奇は言った。もし彼が話すつもりなら、この件は数年も隠されていなかっただろう。

劉興奇も面子を重んじる人間で、人前では物腰の柔らかい、付き合いやすい人物を演じていた。当然、この件を話して自分の評判を落とすようなことはしないだろう。

さらに、彼は人を脅したり強制したりするのは好まず、取引が好きだった。相手が望むなら望むし、望まないならそれまでだ。

もちろん、これは男女間の問題に限ってのことで、ビジネスの場では非常に手段を選ばない。

「黙って！もうその話はしないで」馮雪琴は即座に恥ずかしさと怒りで叱責した。相手が話すか話さないかに関わらず、彼女は気にかかっていた。

「まあいいさ、嫌なら仕方ない」劉興奇は非常に失望した様子で言った。実を言えば、馮雪琴も淫らな女だった。あの時は酔っていたとはいえ、彼だと知らない状況では、かなり積極的だった。だからこそ、彼は忘れられずにいて、普段から馮雪琴を誘っていたが、彼女はずっと拒否し続けていた。

劉興奇は思わずため息をつきながら言った。「君が雷家に行くのは唐雲帆に会うためだってわかっているよ。でも馮お嬢様、相手はもう君のことを好きじゃないんだ。まだ彼のことを想い続けて何になる？それより、俺と結婚したらどうだ？俺の財産は唐雲帆には及ばないかもしれないが、馮家よりは上だぞ！」

そう、劉家は馮家と同じ三流名門だが、資産面では馮家をはるかに上回っていた。馮家は三流名門の末端にかろうじてしがみついているだけだった。