153 道に迷う

朧げな月明かりを通して、彼女はここが豪華な大統領スイートのようだと漠然と見分けた。

  豪華絢爛な装飾、バラの花で飾られたヨーロピアンスタイルのアーチ、高価なサクソンのカーペット、中に入ると、5人が寝られるほどの巨大なキングサイズベッドが一目で見える。

  窓が少し開いており、夜風が新鮮な空気と共に侵入し、深紅のカーテンを揺らし、ひらひらと舞い上がる。

  「あれ?間違えたかな...」

  彼女は慌てて振り返ったが、ドアはすでにしっかりと閉められていた。

  雲詩詩は驚きの中、手を伸ばしてドアノブを握り、回してみたが開かなかった。

  ドアが内側から鍵をかけられている?

  雲詩詩は心臓が飛び出しそうになり、パニックに陥りながら、力強くドアを叩いた。「誰かいますか?ドアが鍵がかかっています。外に誰かいますか?」

  返事はなかった。

  暗闇の中、一瞬の静寂が彼女をさらに不安にさせた。

  彼女は重度の夜盲症で、暗闇の中で方向がわからなくなる。しばらく手探りで探しても電気のスイッチが見つからず、諦めてしまった。

  部屋の静寂さが彼女にとても不安を感じさせた。

  雲詩詩はぼんやりと方向を見定めながら、手探りで窓際まで歩いていき、手を伸ばしてカーテンを大きく開けた。清らかな月光が差し込んできた。

  同時に、彼女は鋭敏に背後に異様な気配を感じ取った。まるでこの部屋にもう一人の人間がいるかのようだった。

  雲詩詩は息を殺して耳を澄ませた。暗闇の中、彼女の後ろ不遠の所から、冷静な足音が近づいてくるのが聞こえ、同時に強烈な侵略的な気配を感じ取った。

  彼女は警戒して即座に振り向こうとしたが、次の瞬間、冷たい手が電光石火の勢いで彼女の両目を覆った。

  彼女が抵抗する間もなく、両手はあっという間に拘束され、もう動けなくなった。

  続いて、背の高い体が突然近づき、彼女を窓際に押しつけた。

  背中がぴったりと冷たいガラス面に押し付けられた。

  彼女は思わず息を呑み、恐怖に駆られた。

  雲詩詩は大きな驚きに襲われ、口を開けて大声で相手が誰なのか問いただそうとした。