349 欲望

雲詩詩はようやく満足げな笑みを浮かべた。

「もう遅くなってきたわね！詩詩、私たちも帰りましょう！」

彼女は無意識に親しみを込めた呼び方をしたが、雲詩詩は嫌な顔を見せなかった。心の中で、いつの間にかこの女性に対して微かな好感を抱くようになっていたため、このような親しみのある呼び方で呼ばれることを嫌がらなかった。

彼女は頷いて立ち上がり、李蘭について外に出た。

個室を出たばかりの廊下で、身なりの整った中年の男性とばったり出会った。

李蘭の方が目が利いて、すぐに相手を認識し、礼儀として急いで笑顔で挨拶した。「あら？錢社長じゃありませんか？なんという偶然でしょう、ここでお会いするなんて！」

この中年男性は他でもない、今回環宇エンターテインメント会社と提携している投資家の錢少華だった。

まさに彼が、環宇の次回製作予定の映画に大規模な投資をした人物で、京城でも名の知れた大物経営者だった！

そのため、礼儀として彼女から挨拶をしたのだった。

錢少華も一目で彼女を認識し、にこやかに言った。「ハハハ！李アシスタントじゃないですか？お会いできて光栄です！まさかここでお会いできるとは！どうして、慕社長と一緒じゃないんですか？」

李蘭は手を差し出して握手をし、返事をしようとした。

しかし男性の視線が移り、彼女の後ろに無表情で立っている雲詩詩をじっと見つめているのに気付いた。

錢少華の目が少し見開き、光を放ち、驚きと意外な表情を見せ、さらには感嘆の色を浮かべた！

この娘は、本当に艶やかだな！

一目見ただけで絶世の美人だと分かった。彼女の存在は、薄暗い廊下全体を輝かせているようだった！

彼の視線があまりにも熱く、また侵略的だったためか、雲詩詩は考え事から我に返り、その視線を追って見つめ返すと、その深い眼差しに刺されたように不快感を覚え、無意識に李蘭の後ろに身を隠すような素振りを見せた。

しかし彼女のこの逃げるような仕草は、彼の目には全く別の意味に映った！

これは、まるで恥ずかしがっているようだ！

恥ずかしがるのも無理はない。この娘は服装や身なりから、そして態度や振る舞いまで、とても初々しく見えた。

そのような純情さは置いておくとしても、ただあの初々しく美しい顔立ちだけでも、彼の心をくすぐるには十分だった！

この娘は、かなり彼の好みに合っていた！