「あなたたちがその立場にいて、審査員という身分なのだから、どうか専門性と客観性を持って臨んでください。考慮すべきは俳優の演技力であって、キャリアではありません」
「ここまで話したのだから、それでもまだ唐寧を落とすというのなら、私は異議を申し立てませんが、ただし、皆さんには納得のいく理由を示していただきたい。そうでなければ、私も大衆も納得できません」墨おじいさんは腕を組んで背もたれに寄りかかり、「最初の人から始めましょう。皆さんの本当の考えを聞かせてください」
一同がしばらく躊躇した後、ベテランの映画評論家が眼鏡を押し上げながら、墨おじいさんに向かって言った。「飛天獎は国家最高の芸術形態を代表する、現在国内で最も権威ある賞です。我々が選ぶべき人物は、卓越した演技力を持つだけでなく、多くの人々から尊敬される存在でなければなりません」
「実は私が唐寧を落とす理由は単純です。彼女は業界内で多くの敵を作り、評判が悪く、傲慢で、多くの業界のルールを破壊してきました」
「演技力で言えば、この10人の候補者の中で、演技力がない人がいますか?しかし、真面目に仕事をする人もいれば、毎日ニュースの見出しを飾る人もいます」
「作品は少ないのに、ニュースは年中絶えません。これが私が唐寧を好まない理由です」
墨おじいさんは聞き終わると、うなずいて他の人々に尋ねた。「皆さんも同じ考えですか?」
「だいたい同じです」
「私もそうです...」
「もしこれがあなたたちの言う客観性なら、これらのノミネートされた人々全員を調べ直す必要がありますね。本当に皆さんはこれらの人々のことを理解しているのですか?」墨おじいさんは冷静に反問した。「私は知りたいですね、唐寧のどこが評判が悪いというのでしょうか?」
皆が突然言葉に詰まったが、明らかに自分たちの意見を曲げる気はなかった。
「よろしい、誰も話さないということは、皆さんが本当に唐寧を好まず、心から彼女に投票する気がないということですね。私は強制しません。ただし、最後に一つだけお見せしたいものがあります」そう言って、おじいさんはスタッフに手を振り、近づいてきた相手の耳元で何か言葉を囁いた。
誰も墨おじいさんが何を企んでいるのか分からず、ただ相手が『奇妙な夫』の撮影メイキングを持ってくるのを待った...