第555章 諦めない様子

「感情というのはそういう計算ではないのよ」唐靖宣は振り向かなかったが、宋妍書へのこの返答は異常なほど冷たかった。「それに、妍書、私はずっと信じているわ。かつて他人のことばかり考えていた人が、本当に悪い人になるはずがないって。もうこんな是非に私を捲き込まないで。あなたのことも、あなたがもたらした情報も、私には興味がないわ」

宋妍書は自分がどうしてしまったのか分からなかった。唐寧の前で、他の人の前での自分を思い返すと、まるですべては偽装で、今この嫉妬で発狂しそうな自分こそが本当の自分なのかもしれなかった。

「洛星、私は本当にあなたが必要なの」宋妍書は立ち上がり、二人の背後で急いで言った。「本当に必要なの」

この言葉を聞いて、今度は唐靖宣が振り向いた。しかし、この瞬間、彼の頭の中は傷だらけの許青顏のことでいっぱいだった。宋妍書の必要性は、ただ自分の不甘を満たすためだけのものだった。

「申し訳ない。私には、君よりももっと私を必要としている人がいるんだ」唐靖宣は許青顏の手を握り上げ、真剣に許青顏を見つめた。

そう言うと、唐靖宣は許青顏の手を引いて、完全に宋妍書の視界から消えていった。一片の未練も残さずに。

宋妍書は魂の抜けたようにソファーに座り込み、両手が震えを抑えられなかった。かつての優柔不断さが、唐靖宣の自分に対する重要性に気付かせなかった。しかし、本当に気付いた時には、すべてが遅すぎたようだった。

遅すぎたのか?

……

実は、宋妍書は知らなかったが、彼女のこの「必要」という一言が、かえって唐靖宣に自分の心をより明確に見せることになった。

自分が望むもの、大切にしたいもの、守るべきものが、誰なのかを。

「あなたの心の中できっと得意になっているでしょう?宋妍書があなたに助けを求めに来たって」ホテルを出た後、許青顏は右手を唐靖宣の手のひらから抜き、少し気まずそうな様子を見せた。

「私にとって、彼女はもう関係のない人になったんだ」

「宋妍書は、諦めそうにない様子でしたけど」

「それは申し訳ないが、私には他の取り柄がないかもしれないが、特に頑固なところがある。一度決めたことは、絶対に後戻りしない」唐靖宣は真剣に許青顏に言った。「行こう、家まで送るよ」