楊熙は徹底的に後戻りできない方法で物事を進め、目的を達成するためには手段を選ばず、目先の利益だけを追求し、長期的な計画など全く考えていなかった。
そのため、唐寧は楊熙が自分の説得に応じるとはほとんど期待していなかった。
セイキョウの芸能界では、スターたちの間で表立った争いや陰謀があるものの、楊熙のように大胆な行動をとる者は初めてだった。
おそらく裏社会の処世術に染まったせいで、楊熙は自分の中にある暴力性に気付いていなかったが、実際には彼女が言う裏社会のボスと同じような存在になっていた。
妊婦に手を出すなんて、しかも妊娠6ヶ月の身だというのに。
この機会を捉えて、唐寧は助けを求める声を上げた。王妃の間の前を通りかかった人が、おそらく唐寧の叫び声を聞いて、すぐにドアを開けたが、目の前にいる多くの保全と楊熙を見て、一瞬躊躇してから逃げ出してしまった……
恐れを抱くのは誰でも同じ、特に異国の地では。唐寧が間違っていなければ、その女性も慈善パーティーに招待された有名芸能人の一人のはずだった。
「助けを呼んでも無駄よ。誰も助けになんて来ないわ」
「思い上がっていた唐寧がこんな日を迎えるなんて、私の手に落ちる日が来るなんて、想像もしなかったわ」
唐寧は二人の大柄な男が近づいてくるのを見て、心の中では不安を感じながらも……墨霆が必ず現れる、墨霆は絶対に自分と子供を危険な目に遭わせないと、固く信じていた。
「わかったわ、もはやこうなってしまった以上、私には抵抗する術もないけど、でも言わせてもらうと、あなたは完全に間違った人を捕まえているわ」
唐寧は苦笑いを浮かべながら、自分の腹を指さして言った。「あなたは私を買いかぶりすぎよ。私がここまで来られたのは、あなたと同じように、ただの利用されているだけなの。あなたたち皆が私は墨霆の愛する人で、墨霆が最も守る人だと思っているけど、実は違うわ」
「墨霆は他の人を愛しているの。私はただその人の盾になっているだけ。今みたいに、私があなたに計略で誘拐されても、結局飛天獎は彼女のものになるのよ」
楊熙は唐寧の言葉を聞いて、思わず笑い出した。「作り話を続けなさい、どうぞ続けて……」