第693章 恐ろしすぎる

おそらく相手の言葉があまりにも重く、耳障りだったため、段景紅は突然大股で前に出て、宋昕と向かいの数人との距離を引き離した。

「もういい。うちのタレントのことは、部外者がとやかく言う筋合いじゃない」

宋昕は大きな屈辱を感じた。恥ずかしさと怒りで地面に穴があれば入りたい気持ちだったが、対面の唐寧はどうだろう？平然とした表情で、彼女を全く眼中に入れていなかった。

「あなたのタレントが臨月の妊婦まで困らせなければ、誰も彼女のことを言いたくなんかないわ」

「あなた...」

宋昕は段景紅まで辱められたくなかったので、ただ怒りの目で唐寧を見つめ、震える声で言った。「もういいでしょう？」

その言葉を聞いて、唐寧は彼女のために立ち上がった二人の女優の肩を軽く叩いた。「ありがとう、大丈夫よ。少なくとも、こういう場では何もされないから」

当事者が気にしないと言うなら、二人もこれ以上追及する必要はなかったが、それでも笑顔で唐寧に言った。「どういたしまして」

そう言って、二人は立ち去り、トイレの入り口には唐寧と段景紅だけが残った。

宋昕は目を赤くし、上下する胸から、怒りを必死に抑えているのが分かった...

「ちょっと外で息をつきます」と言って、宋昕は立ち去った。唐寧と一秒でも長く向き合うのが息苦しかったからだ。

段景紅は宋昕が去るのを見送り、周囲を確認して二人だけになってから、唐寧に言った。「外であなたは人の心を操るのが上手いって噂があるけど、本当だったのね。唐寧、あなた本当に恐ろしい。自分の人気が宋昕をはるかに超えているのを知っていながら、こんな場で彼女を辱めるなんて」

「あなたはどうなの？私の知名度が彼女より高いことを知っていながら、注意もせず、止めもせず、好き勝手させて。あなたの心の中では何を考えているの？」唐寧は顎を上げて問い返した。「私から見れば、あなたは彼女が恥をかくのを見たかったんでしょう」

「あなたは皆が自分のように、身近な人まで計算に入れていると思っているの？今日、宋昕を辱めたのは、あなたの話題作りに利用された借りを返したことになるわ。これで私たちは清算済み...」段景紅は立ち去ろうとしたが、唐寧の横を通り過ぎる時、冷笑するような声が聞こえた。