第760章 セイキョウの男優たちの出番がほぼなくなった

皇甫朔は『法醫皇妃』の主演男優だと噂されていた。もちろん、彼も進んで「責任を取る人」になることを受け入れていた。どうせ、制作側は主演男優を公表するつもりはなく、撮影は完全非公開で行われていた。

海瑞は複数の撮影所を所有しており、これは難しいことではなかった。そのため、制作側から他の公式発表やイベントがない状況下で、皇甫朔は当然のように『法醫皇妃』の宣伝を担当することになった。

この作品に出演することになってからも、彼は美女に囲まれる性格を変えなかった。撮影は撮影、私生活は私生活で、彼は決して両者を混同することはなかった。最近、白瑜を打ち負かしたこともあり、彼の気分は絶好調だった。そのため、記者のインタビューを受けた際には、必ず『法醫皇妃』の制作について少し触れ、俳優としての責任を果たすとともに、墨霆が白瑜を辱める機会を与えてくれたことへの恩返しとしていた。

実際、制作参加を発表してから一ヶ月が経過したが、彼でさえ主演男優に会ったことがなかった。

最初の数日間は、通常、脇役のシーンを撮影していたため……

唐寧もまだ正式に制作に参加していなかった。おそらく二人の子供のことがあり、まだ適切な準備ができていなかったからだ。

皇甫朔はまったく気にしていなかった。どうせ、彼は自分の脇役としての役柄が気に入っていたし、この役の衣装がさらに気に入っていた。銀色の龍の刺繍が施された錦の袍を身にまとい、玉の冠をかぶると、威武堂々として威厳に満ちた様子だった。

主演の役と比べると、彼の設定ははるかに気楽だった。主演のように複雑な策略や心配事が多くなかった。一方では女主人公への恋心を悟られないようにしながら、もう一方では腹黒い権謀術数で自分の江山を守らなければならない。このような人は、現実でも生きるのが大変だろう。

……

実は、唐寧は制作に参加する二日前に、墨霆を探りを入れてみたが、墨霆は全く普段と変わらない様子で、通常通り出勤と帰宅を繰り返し、そしてベイビーの世話をしていた。彼は本当に落ち着いていた……

「自分の制作なので柔軟に調整できるから、夜は家に帰れるし、昼間は二人のお母さんがベイビーの面倒を見てくれる」と墨霆は彼女に念を押すように言った。「もし疲れすぎてホテルで寝たいなら、私に電話してくれれば手配する」