第762章 これが君奕瀾なのか！

唐寧は男性主役が誰なのか知りたかったものの、表情には出さなかった。共演シーンを撮影する時には必ず会うことになるのだから、早かれ遅かれ分かることだった。

唐寧にはマネージャーもアシスタントもいないことを知っていたため、撮影スタッフは彼女に特別な配慮をしていた。中にはそれを不思議に思うスタッフもいた。

「あなたは今や人気者で、何でも手に入るのに、なぜいいアシスタントを雇わないの？他のトップスターを見てごらんなさい。みんな二人のアシスタントと四人のボディーガードを連れているのが当たり前になっているのに、あなたは何でも自分でやっているのね。」

撮影現場に弁当を届けるおばさんは、唐寧の弁当を取りに来る人がいないのを見て、自ら届けてくれた。

唐寧は食べながら、特別な温かさを感じた。

「私一人で大丈夫です。特別なケアが必要なところはないんです。おばさんが親切なだけです。」

「まあ、あなたのように誠実な人は、最近めったに見かけないわ。たくさん食べなさい。」

唐寧はアシスタントが必要ないわけではなかった。ただ、宋妍書の件があってから、必要性を感じなくなった。特に二人のベイビーを産んでからは、一人でも特に困ることはないと感じていた。

唐寧は微笑んで、おばさんの好意を受け入れた。その後、スタッフの驚きの声が聞こえてきた。「男性主役が現場入りしたそうですよ！男性主役が来たって！」

「誰か見たの？」

「人から聞いただけよ。午後には会えるんでしょう？」

確かに、午後には...二人の共演シーンがある。唐寧は、この人がずっと姿を見せないはずがないと思っていた。

「まあ、本当に楽しみ！」

食事の後、唐寧は撮影現場で台本を読んでいた。午後のシーンは非常に重要で、まず男性二番手との共演があり、その後男性主役とほぼ決裂するシーンがあるため、彼女は全神経を集中させていた。

これは彼女と皇甫朔との最初の共演シーンでもあった。実は密かに期待していた。皇甫朔は不真面目な性格だが、演技の面では申し分なかったからだ。

すぐに、唐寧と皇甫朔は最初の共演シーンの撮影を始めた。