第056章 綿に拳を打ち込む

今日、寧夕が撮影するのはダンスのシーンだ。昨日の重々しい宮廷衣装とは違い、今日の衣装は軽く薄いので、やっと一息つけそうだ。

　　メイクルームに入ると、寧夕は一瞬驚いた。賈青青がいるとは思わなかった。

　　賈青青はもう来ないだろうと思っていた。

　　以前、賈青青は女二号のオーディションに落ちて、映画監督から女三号の賢妃役を演じるよう誘われた。

　　女三号も国を滅ぼす妖妃だが、寧夕よりもずっと出番が少なく、劇中では寧夕にひどい目に遭わされる。

　　マネージャーが賈青青の代わりに出演を受け入れたものの、本人は非常に不満で、クランクインセレモニーにも出席せず、一時は降板の噂まで流れた。

　　寧夕は、おそらく制作費が大幅に増額されたという噂を聞いて、今日はおとなしく来たのだろうと推測した。