第107章 恋する男

寧夕は本来、自分でお金を払うつもりだった。小包子ちゃんへのプレゼントのつもりだったが、こんな厄介な状況になるとは思わなかった。

この服は本当に気に入っていた。本来小包子ちゃんのものになるはずだったのが、應芳琳のような人に奪われると思うと全身不快になり、結局陸霆驍さんからもらったブラックカードで支払うことにした。

寧夕がカードを出した瞬間、販売員と二人の女性は呆然としてしまった。

販売員はこの業界で見聞が広いので、すぐにこのカードを認識した。應芳琳と金萱萱は実物を見たことがなかったが、そういう界隈の女性は生まれつきこういうものに敏感なので、すぐにこれが「カードの王」と呼ばれる世界限定の無制限ブラックゴールドカードだと分かった。

このカードは非常に敷居が高く、年会費も驚くほど高額で、世界中で受けられるサービスも一流だ。公開発行されておらず、申し込むこともできず、プラチナカード所有者の中から1%の顧客を選んで招待するため、お金があっても手に入らない。このカードを持てるのは各国の政治家、億万長者、社会の名士だけだ。

應芳琳は顔を強張らせ、冷ややかに鼻を鳴らした。「偽物のカードじゃないでしょうね!お嬢さん、よく確認してくださいよ!」

販売員は見たことはあったが、実際には一度しか見たことがなかったので、慎重にカードを受け取り、カード読み取り機を操作し始めた。

10秒後、販売員はすぐに満点の笑顔に変わり、90度お辞儀をして、「お嬢様、処理が完了いたしました。すぐにお包みいたします。」

寧夕は頷いた。「ありがとうございます。」

應芳琳と金萱萱はその場に呆然と立ち尽くし、顔を見合わせ、寧夕を見る表情は幽霊でも見たかのようだった。

寧夕は包装された服を持って、そのまま立ち去った。

ハイヒールを履いて去っていく寧夕の背中を見て、應芳琳は歯ぎしりしながら、悪意に満ちた顔で言った。「何が得意げなのよ、きっとどこかの金持ち老人の愛人になったんでしょ!子供を産んだからって豪邸に嫁げると思ってるの?」

「そうよ、いつかは本妻にやられちゃうわよ!」金萱萱も同調した。

……

子供服売り場を出た後、寧夕は階下に向かう途中で紳士服売り場を通りかかった。