蘇衍と寧雪落が化粧室に戻ると、二人とも意気消沈していた。
寧雪落は男の前で落ち着かない様子で立ち、目尻から涙を一滴流した。「衍にいさん、私のことを怒ってる?寧夕の要求を受け入れなかったから……」
蘇衍は心痛めて手を伸ばし、彼女の涙を拭った。「君を怒るわけがないだろう!」
寧雪落はすぐに救われたかのように彼の胸に飛び込んだ。「衍にいさん、ありがとう。私を信じてくれて、分かってくれて。私は寧家の栄華を手放せないわけじゃないの。ただ父と母を手放せないだけ。二人と離れることを考えると、もう二度と会えないと思うと、私は……」
「よしよし、もう泣くな。分かってる、全部分かってるよ……」蘇衍は彼女の背中を軽くたたきながら、ため息をついた。「俺が甘かったんだ。彼女がまだ昔の小夕ちゃんだと思っていた。雪落、約束するよ。これからは彼女のために君を犠牲にしたりしない。彼女に君を少しも傷つけさせない!」
「衍にいさん……」寧雪落は目の前の男を熱っぽく見つめ、滑らかな腕を彼の首に回して、自分の唇を差し出した。
「ここは撮影現場だぞ。誰かに見られたら……」
「見られてもいいじゃない。あなたは堂々とした私の彼氏なんだから!」寧雪落は甘えるように言い、彼の膝の上に座り込んで、指で彼の胸に触れ、ボタンを一つずつ外し始めた。
ふん、寧夕、私はあなたの男を寝取ってやるわ。どうよ……
しばらくすると、化粧室から艶めかしい喘ぎ声が聞こえてきた。
「んん……あっ!衍にいさん、すごい!もっと激しく!もっと激しくして……」
「衍にいさん、私と寧夕、どっちがいい?ねえ?どっちがいいの?」
「もちろん君さ!」
容姿で言えば、実際寧夕の方が上だった。ただ彼女はあまりにも内向的で恥ずかしがり屋で、特に男女の事に関しては全く分からず、彼を喜ばせるようなことを自ら進んでするなんてもっての外だった。
最初は、確かに他の少女とは違う彼女の純粋さや素朴さに惹かれた。しかし時間が経つにつれ、あまりにも味気なく感じるようになった。
しかし、今の寧夕は昔とは全く別人のようだった。まるで……
まるで妖精のように……