第525章 皇太子が小閻魔さまに変身

坊ちゃまがエレベーターの前で焦っているのを見て、すぐに美しい女性社員が親切に近づき、とても優しい声で「坊ちゃま、上の階に行かれますか、それとも下に行かれますか?エレベーターのボタンを押させていただきます!」と声をかけました。

坊ちゃまは眉をひそめて考えました。小夕おばさんはもう下にいるはずで、もしかしたらエレベーターを待っているかもしれません。この時エレベーターに乗って、小夕おばさんとすれ違ってしまったらどうしよう?

うーん、焦るけど、ここで待っていた方がいいかな!

そこで、小さな坊ちゃまは一言も発せず、静かにエレベーター前で待ち続けました。

隣にいる女性社員のことなど、今は小夕おばさんのことで頭がいっぱいで、実は彼女の存在にまったく気付いていませんでした。まして彼女の言葉など耳に入っていませんでした。

その美しい女性社員は若君が自分を無視したことに気まずそうな表情を浮かべました。諦めきれない様子でしたが、若君の機嫌を損ねる勇気もなく、軽く咳払いをして横に退き、もう邪魔をしないようにしました。

向かい側にいた数人の女性社員たちは、その様子を見て小声で嘲笑いました。「笑っちゃう、若君にまでお世辞を言おうとするなんて!」

「ちょっと美人だからって調子に乗って、陸社長は全然見向きもしないのに、今度は若君に目をつけるなんて!若君は陸社長以上に機嫌を取るのが難しいのよ?」

「そうよね、前にも帝都のファーストレディの座を狙って、若君を通して近づこうとした令嬢たちがいたけど、みんな尻尾を巻いて帰っていったわ!それどころか、陸家から警告まで受けたのよ!」

「うーん、そういえば、噂の未来のおかみさまは若君とどんな関係なのかしら?」

「難しいんじゃない?男性の機嫌を取るのが上手くても、子供に好かれるとは限らないわ!」

「そうね、子供って継母的な存在を嫌うものだし、この人が本当に未来のおかみさまになれるかどうか、まだわからないわね!」

……

小包子ちゃんは動かず、無表情でエレベーターの前に立ち、上にも下にも行こうとしませんでした。

先ほどメアリーが冷たい態度をとられたので、みんなも声をかける勇気がなく、ただこっそりと様子を窺うばかりで、見れば見るほど気になってきました。

「若君は一体何をしているの?エレベーターの前に随分長く立ってるわ!」