第520章 よかった、彼女が来てくれた

寧夕はホテルの部屋のドアベルを押した。

押した瞬間、ドアが勢いよく開かれた。

若者は落ち着かない様子で緊張しながらドア前に立ち、興奮を隠せない表情で「社長！来てくださったんですね！」と言った。

寧夕を見た宮尚澤の表情には、興奮の他に安堵の色も浮かんでいるようだった。

ロサンゼルスでの寧夕の出現は彼にとってあまりにも突然だったため、昨夜は一睡もできず、これが夢なのではないかと心配し、朝早くから目を覚まし、寧夕が来るのを待ち続けていた。彼女が来ないのではないか、自分のどこかが気に入らなくて気が変わってしまうのではないか、また絶望の淵に落ちてしまうのではないかと不安だった……

でも、よかった。彼女は来てくれた。

寧夕は身なりの整った宮尚澤を見て、「準備はできた？すぐ行く？」と尋ねた。

「はい、行きましょう！」

「朝ご飯は食べた？」

「はい、ホテルで朝食が出たので」

「よし！じゃあ出発しましょう！まずは物件を見に行きましょうか？物件が決まったら、必要なものを買いに行けますからね！」

「はい」

……

寧夕が後で詳しく見てみると、陸霆驍が用意してくれた資料には、物件見学の順序や最適な交通ルートまで計画されていて、感心せずにはいられなかった。同時に、心の中は温かい気持ちでいっぱいになった。

朝から宮尚澤と一緒に何カ所もの物件を見て回った。さすが大魔王のお勧めだけあって、どの場所も非常に適していて、大家さんたちもとても親切だった。

最終的に、二人は城南の高級オフィスビルに決めた。

スタジオの広さは大きくないが、十分な広さで、シンプルな内装で、オフィス用品も揃っていて、すぐに入居できる。彼女のニーズを完全に満たしていた。最も良い点は、周辺の会社のほとんどがアート関連で、アパレルデザイン会社も多く、雰囲気が非常に良かった。

寧夕は宮尚澤と相談した後、すぐにここに決めた。

大家さんと契約を済ませた後、二人は買い物に向かおうとした。

「この二日間は主に買い物をして、それから人材市場に行って何人か採用しましょう……」

寧夕が宮尚澤と話している時、向かい側から若い男女のグループが近づいてきた。

彼らはおしゃれな服装で、真ん中を歩く男性は周りの人々に囲まれ、得意げな表情を浮かべていた。