第570章 魔を鎮める宝、小夕夕ちゃん

寧雪落は今、完全に呆然としていた。陸氏グループから人が来るとしても、せいぜい秘書程度だと思っていたのだ。

もしこの車が陸霆驍の専用車でなければ、陸霆驍の秘書さえも想像できなかったほどだ。

程鋒は陸霆驍が最も信頼する側近の一人で、陸氏グループでの地位は非常に高く、通常の案件では彼が直接出向くことはなく、部下の誰かを走り使いに出すだけで十分だったからだ。

だから、まさか陸霆驍の実弟である陸景禮が直接訪ねてくるとは思いもよらなかった！

寧耀華と莊玲玉が自分を見る目に満ちた賞賛を見て、寧雪落の胸は膨らみ、虚栄心は今までにない満足を得て、興奮して陸景禮に向かって歩き出した。「二少さま...」

寧耀華もようやく落ち着きを取り戻し、会社の取締役会長としての威厳を保ちながら、重々しい足取りで陸景禮に向かって歩き出した。「陸二少爺、遠路はるばるお越しいただき、お迎えが遅れまして...」

寧耀華の言葉は途中で止まり、手も宙に浮いたままだった。

派手な水色のスーツを着た陸景禮は、まるでこの三人が見えないかのように、彼らを通り過ぎて後ろの方向に駆け寄り、その端正な顔には涙を浮かべそうな表情を浮かべながら、「お姉...」

一文字言いかけたところで、寧夕の表情が凍りつき、その目は小さな飛び道具のように三連発で射られ、陸景禮は思わず口に出かけた「お姉さん」という言葉を飲み込んだ。

陸景禮は首をすくめ、さらに委屈そうな表情で弱々しく言った。「小夕夕ちゃん、やっと出てきたね。待ちくたびれて、お腹ペコペコ〜早く車に乗って〜社長をこんなに待たせるなんて、もう辞めたいの？」

陸景禮は急いで上司モードに切り替えたが、その切り替えは全く威厳がなかった。

寧夕はほっと胸をなで下ろした。この口の軽い馬鹿者のせいで、心臓が止まりそうになった。どうしてTPOを考えずに叫ぶんだろう！

しかもこのバカは上司という立場を利用して、殴ることもできず、叱ることもできず、怒りを胸の中に抑え込むしかなかった。

しかし陸景禮は全く気にする様子もなく、にこにこしながら近づいてきた。「あら、社長が直接迎えに来てびっくりした？大丈夫大丈夫、どうせ途中だし、早く乗って！早く早く〜」