第621話 最大の敵は自分自身

宮尚澤は言い終わると、表情が暗くなった。「私は全力を尽くしましたが、今回の受賞の可能性は低いでしょう。この賞はとても重要なので、戴威は間違いなく私の最高傑作を選ぶはずです……」

寧夕の表情が曇った。宮尚澤にとって、この戦いは確かに厳しいものだった。

なぜなら、彼の対戦相手は他人ではなく、自分自身だったからだ。

「大丈夫よ、全力を尽くせばそれでいい。今回ダメでも、次があるし、その次もある。いつか必ず過去の自分を乗り越えられるわ。あなたには無限の可能性があるけど、相手にはいつか使い果たしてしまうかもしれないデザイン案しかないのよ。怖がることなんてないわ！」

宮尚澤は少女の輝く瞳を見つめ、弱々しい体に力が注ぎ込まれたかのように、力強くうなずいた。「うん！」

「さあ、安心して休んで。明日はまた大きな戦いがあるわ！」

……

翌日。

金頂獎コンテスト会場。

中國服飾デザイン界最高の賞として、今日の会場は比類のない豪華さで、かつ幻想的な雰囲気に包まれていた。

客席は地上約1メートルの空中に浮かび、照明は五色に輝く破片となって、ノアの方舟に改造されたT字型ステージの上で煌めいていた。

コンテスト会場の席は入手困難で、来場者は全てファッション界の著名人ばかり。寧夕の芸能界での地位では明らかにまだ参加資格が足りず、入選作品のスタジオの社長という立場で招待されたのだった。

寧夕が宮尚澤と小さな助手を連れて会場に入って数歩も進まないうちに、前方が人で塞がれているのに気付いた。

コンテストはまだ始まっていないのに、カメラマンたちは今回の受賞有力候補のデザイナー・戴威を熱狂的に取り囲んでいた。

「David、今回のコンテストに自信はありますか？みんなが今回の金頂獎はあなたしかいないと言っていますが！」

「前回の金頂獎受賞者の李銘先生もあなたが大賞を取ると予想していると聞きましたが、本当ですか？」

「今回は芸能界の先輩方も大勢いらっしゃっていて、多くの方があなたのファンで、あなたの作品を着て会場に応援に来ているそうですが、これについて何かコメントはありますか？」

……