第606章 彼女を女として見たことがない

その時、寧夕のいるビルの下の見晴らしの良い一角で。

黒いマイバッハが静かに停まっており、近くには小規模な武装部隊が潜んでいて、いつでも指示を待っていた。

夜が徐々に更けていき、空気が凝固したかのように、全員の心臓が緊張で張り詰めていた。

暗がりで、程鋒の携帯が突然鳴り出した。重要な任務中だったので本来は出たくなかったが、発信者を見て結局電話に出た。

「もしもし、何か用か?」

「鋒兄さん、なぜ任務があるのに僕を呼んでくれないんですか?」話していたのは石逍だった。

続いて電話の向こうから熊志の声も聞こえてきた。「僕も僕も!」

明らかに二人は一緒にいた。

程鋒は眉間を揉んだ。「今回の任務は寧さんに関係があるんだが、本当に参加したいのか?」

電話の向こうは長い間沈黙が続いた。