第655章 俺の宝物VS我が妻

少女を見た瞬間、陸霆驍の凍てついた表情に一筋の亀裂が入った。「寧夕……」

江牧野からの電話を受けてから今まで、わずか数時間だったが、まるで何世代も経ったかのように長く感じられた。

今やっと彼女に会えた！

寧夕の言葉を聞いて、銀髪の男の表情は完全に崩れ、すぐさま背を向けて罵声を浴びせた。「ふざけるな！中に入れ！唐夜、彼女を連れて行け！」

見ているだけでイライラする！

よくも俺の目の前で浮気なんてできたものだ！

天に向かって逆らいやがって！

封晉が軽く咳払いをし、風瀟瀟は鼻を擦りながら無言で空を見上げ、唐夜は予想通りといった表情で命令に従い、歩み寄ってエンジンをかけた。

窓の外の景色が急速に後退し、陸霆驍の姿が遠ざかっていくのを見て、寧夕は急に焦り出し、車の窓に寄りかかって悲しそうに叫んだ。「うぅ……行きたくない……行きたくない……」