この時、両勢力が対峙し、火薬の匂いが漂っていた。しかし、今のところ誰も軽はずみな行動は取れなかった。
「どうしたんだ?」隊列が突然停止したため、後ろの銀色の車から男の問いかける声が聞こえた。
車の中で、男の隣にいた寧夕は元気のない様子で、失血のせいで顔色が真っ青だった。外で何が起きているのか気にする余裕もなく、物音を聞いても、まぶたを少し持ち上げただけですぐに目を閉じた。
唐夜は装甲車から降り、銀色の車の横まで歩いてきて、「軍の者たちです」と言った。
車内で、銀髪の男はその言葉を聞いて目が冷たくなった。「ほう?」
フィラデルフィアはいつも無法地帯だったのに、軍が今回余計な口出しをするとは?
しかも、この様子では動員できる軍事力を全て集めてきたようだ……
「面白い」男は口角を上げ、ドアを開けて車から降りた。
向かい側の戦車の上で、大尉は降車してきた銀髪の男を見て、思わず口角が引きつった。監視カメラを見た時から嫌な予感がしていたが、まさか本当にこいつが戻ってくるとは……
戻ってくるのは構わないが、おとなしく引きこもっていてくれれば互いに干渉することもなかったのに、今回は厄介な人物に絡んでしまい、軍は板挟みになってしまった。
「維蒙たいい、お久しぶりですね〜今日はお茶でも飲みに来られたのですか?」男の口調は傲慢そのもので、まるでフィラデルフィアが自分の家であるかのようだった。
傍らで、封晉は男の傲慢な態度に冷や汗を流した。はぁ、この男は本当に分別を知らない。もともと彼らの状況は危険なのに、今度は軍の人間まで敵に回してしまった。一歩間違えれば今日は無事には済まないだろう。
大尉はその言葉を聞いて表情が厳しくなったが、怒りを爆発させることもできず、重々しく言った。「先ほど捕まえた人を引き渡してくれ。そうすれば皆が楽だ!」
上からの指示、平和的解決を忘れていなかった。
オーガスティンだけなら対処も簡単だったが、今相手にしているのは……もし両者が戦闘になれば、影響があまりにも大きすぎる!
銀髪の男はその言葉を聞いて眉を上げた。自分が捕まえた人?
「誰を捕まえたというのでしょうか?」男は興味深そうな口調で問い返した。
大尉が言い訳だと思って口を開こうとした時、後ろの車から一人の男が降りてきた。