第658章 男に「できるのか」と聞くな

相手の何気ない表情を見て、唐夜は両手を固く握りしめ、指の関節が白くなって軋むような音を立てた。レンズの奥の普段は冷淡な瞳には、怒りの炎と僅かな痛みの色が宿っていた。「お前……」

唐夜の傷ついた眼差しを見て、唐浪の表情が微かに動いた。すぐに彼の視線を避け、目を閉じてから口を開いた。「先輩、勝負しましょう。勝った方が小師妹を連れて行く。どうですか?」

一瞬の死のような沈黙の後、唐夜はついに答えた。「いいだろう」

傍らで、状況が飲み込めていない寧夕は完全に呆然としていた。

な...なんてこと...

二番目の先輩が組織を裏切った?

じゃあ、誰に寝返ったの?

いや、さっきまで二番目の先輩は何の問題もなく大先輩を気絶させて彼女を救おうとしたんだ...

もしかして大魔王の配下になったの?

まさか?

それはありえない!二番目の先輩がどうして大魔王と関係を持つことができるの?

でも今のところ、それしか説明がつかない。でなければ、なぜ二番目の先輩がちょうどこのタイミングで現れ、Satanに逆らってまで彼女を救いに来たの?

寧夕が我を忘れている間に、前方の二人はすでに数十回の攻防を繰り広げていた。

しかし、悲しいことに、唐浪は一手一手完全に押さえ込まれ、ずっと防戦一方で、攻撃の余地すらなかった。

寧夕の心に芽生えたばかりの希望の灯火が少しずつ消えていき、声を張り上げて焦りながら叫んだ。「二番目の先輩!あなた本当に大丈夫なの!?」

唐浪は唐夜の狂気じみた攻撃をかわしながら、歯を食いしばって言った。「男に『大丈夫なの』なんて聞くなよ!」

その言葉が終わるや否や、唐浪の気迫が一変した。

寧夕は即座に目を輝かせた。唐浪がついに本気を出したのだ。

果たして、現場の状況は直ちに変化した。

唐浪が反撃を始め、二人は互角の戦いを繰り広げた。唐浪のやつは本気を出したとはいえ、それほど本気でもなく、戦いながらも口は相変わらず生意気だった。「おや、師匠も随分偏っているじゃないか。新しい技をたくさん教えてもらったみたいだな!」

寧夕は口角を引きつらせた。よく言うよ、あんたが半年も姿を消したから、師匠は大先輩にしか教えられなかったんじゃない。

さらに生意気なことに!