第261章 宝石のブレスレット

「持ってきていません。」

  あの日、三金から聞いた話によると、その箱の石は数千万の価値があるとのことだったので、薛夕はそれ以来、そんな不用意に石を身につけて持ち歩くことはなくなり、直接家に置いておくようになった。

  ただ、こんな高価な箱入りの石を、葉儷にどう説明すればいいのかわからず、とりあえず家族には告げていなかった。

  周振はこの言葉を聞いて、少し失望したが、薛夕が石、石と言うのを聞いて、あの日のことを思い出した。彼女の寶石が床に落ちたとき、みんなが寶石だと言ったのに、薛夕はただ冷静に「ただの石ころよ」と言っただけで、全く自慢する様子はなかった。

  それに!

  薛夕が落とした箱入りの石も、彼女が意図的に見せびらかしたわけではなく、クラスメイトたちが騒いでいる間に、うっかり彼女の机を押してしまって床に落ちたのだ。