彼はまだ娘のお金を使うのは良くないと感じていた。
考え込んでいる時、入り口から声が聞こえてきた。「兄さん、お金がなくなったんじゃないの?」
薛晟が顔を上げると、薛貴が入ってくるのが見えた。
薛貴の後ろには、薛晟の秘書がついてきていて、今は困った顔で薛貴を見ていた。「薛さん、勝手に入ってはいけません...」
しかし薛貴は口を開いた。「ここは兄貴の会社だ。俺が来ちゃいけないわけがないだろう?」
秘書は困惑した表情で薛晟を見た。
こんな理不尽な人に遭遇して、彼女も本当に困っていた。主に二人の関係がよくわからず、警備員を呼ぶべきかどうかもわからなかった。
この状況を見て、薛晟は眉をひそめた。「次に誰かが無理やり入ってきたら、すぐに警備員を呼びなさい。」
秘書はほっとして言った。「はい、薛社長。」
薛貴は許しを請うように言った。「いや、兄貴、次は必ず大人しく待つから勘弁してくれよ。でも、本当にお金がなくなったのか?」
薛晟は秘書に出て行くように言い、宋くんにも先に出るように言った。
薛貴は薛晟の向かいに座り、口を開いた。「兄貴、俺と父さんは起業が大変だってわかってる。だから、兄貴の会社に何か問題があったって聞いて、心配になったんだ。そこで、様子を見に来たってわけさ。」
彼は辺りを見回して言った。「兄貴のこの新しいオフィスビル、俺たちの茂盛グループの本社ビルほど良くないな。このオフィスも、前ほど広々としてないし。兄貴、お金がなくなったって聞いたぞ。父さんが帰ってこいって言ってる。」
薛晟は口を開いた。「必要ない。」
しかし薛貴は食い下がった。「兄貴、俺たちは家族だぞ。帰ってこいよ。父さんが言ってた。帰ってくれば、この会社にお金がないなら、少し資金を回して、続けられるようにしてやるって。」
しかし薛晟は頭を垂れ、手元の銀行融資資料表を見た。「用がないなら帰れ。」
これは彼が銀行から持ってきたもので、融資を申請するつもりだった。
しかし実際、彼らの研究に何の成果もない段階では、融資を得るのは非常に難しい。ところが彼がこのアイデアを提案したとたん、銀行の支店長はこの用紙をくれた。まるで上の金額を自由に記入できるかのようだった。
薛晟はわかっていた。これは錢鑫のおかげだ。