第317章 夕さん、僕の勝ちだ(5000字の長編)

負けられない、全力を尽くさなければ。

  薛夕はそのことを考えながら、同時に直感的に感じた違和感について思いを巡らせていた。

  何かがおかしい……

  彼女は何かがおかしいと感じていた。

  しかし、具体的に何がおかしいのか、うまく言葉にできなかった。

  周囲の山の景色を見渡すと、木々が立ち並び、青々と茂り、山間は静寂に包まれ、一切の音が聞こえない……

  一切の音が聞こえない……

  薛夕は突然何かに気づいたように、立ち止まって叫んだ。「小さな炎!」

  高彥辰も足を止め、振り返って彼女を見た。薛夕の表情が緊張に満ちているのを見て、「問題があります!」

  山に登る時、周振に会った。彼が秦爽と話しているのを薛夕は注意深く聞いていた。彼らは最初に下山したグループだった。