第370章 天は青く、野は茫漠

薛夕は直接その場で立ち尽くした。

  その顔は、見覚えがあるようで見知らぬものだった。

  五官は同じだが、雰囲気は全く異なっていた。

  小さな炎が人にぶつかったら、不機嫌そうに眉をひそめて、怖い顔で「ごめん」と言うだろう。しかし、この人は衝突された人を見つめ、沈黙の中に傲慢さを漂わせ、衝突された人の罵声がだんだん小さくなり、最後には口をゆがめて黙ってしまった。

  この人は歩き続けた。

  それでも、薛夕はこの人が小さな炎だと感じた。

  「夕さん、何を見ているの?」

  謝瑩瑩が突然話しかけ、薛夕は我に返った。彼女は謝瑩瑩に答えず、珍しく感情を抑えきれず、小さな炎の後ろに駆け寄って叫んだ。「ひーちゃん。」

  制服を着た少年は聞こえなかったかのように、そのまま前に進んだ。