トイレ全体が一瞬静まり返った。
王薇の顔に浮かんでいた憤慨の表情が凍りついた。世界で最も恥ずかしいことは、おそらく人の悪口を言っているところを本人に聞かれることだろう。
でも、悪口を言われた本人も恥ずかしいはずじゃないか?
ところが、薛夕はまるで何事もなかったかのように、落ち着いて洗面台に向かい手を洗い、それから鏡の前で髪の毛を帽子の中に入れた。整えてから、ゆっくりと出口の方へ歩いていった。
入り口で入ってきたばかりの数人のクラスメイトたちは、気まずそうな表情で、ぎこちなく笑い、誰かが最初に口を開いた。「薛夕さん、こんにちは」
この声を薛夕は覚えていた。彼女の肌がきれいだと褒めた子で、悪意はなかった。
薛夕はその子に頷いて返した。「こんにちは」