トイレ全体が一瞬静まり返った。
王薇の顔に浮かんでいた憤慨の表情が凍りついた。世界で最も恥ずかしいことは、おそらく人の悪口を言っているところを本人に聞かれることだろう。
でも、悪口を言われた本人も恥ずかしいはずじゃないか?
ところが、薛夕はまるで何事もなかったかのように、落ち着いて洗面台に向かい手を洗い、それから鏡の前で髪の毛を帽子の中に入れた。整えてから、ゆっくりと出口の方へ歩いていった。
入り口で入ってきたばかりの数人のクラスメイトたちは、気まずそうな表情で、ぎこちなく笑い、誰かが最初に口を開いた。「薛夕さん、こんにちは」
この声を薛夕は覚えていた。彼女の肌がきれいだと褒めた子で、悪意はなかった。
薛夕はその子に頷いて返した。「こんにちは」
そして、ポケットからティッシュを取り出し、一枚抜いて手を拭いた。それからティッシュをゴミ箱に捨て、落ち着いて出ていった。
みんな:「…………」
誰かが「すごく気まずい!」と言って、奇妙な静けさを破った。
そして、みんなが口々に話し始めた。
「ああああ、もう薛夕さんの顔を見られない気がする。私たち、さっき何を言ったの?」
王薇はみんながそう言うのを聞いて、唇を噛んだ。
自分の言葉に問題があるとは思っていなかったが、人の悪口を言うのは確かによくない。特に、現場を押さえられてしまったのだから……
数人がトイレを済ませた後、トイレを出た。
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李教官がホイッスルを吹いた。「集合!」
女子学生たちが再び集まり、整列した後、行進を始めた。
女子学生たちがきっちりと揃って歩くのは難しく、みんな列ごとに分かれて練習した。しばらくすると、あまりにも下手すぎて、李教官が怒り出した。「これは何だ?立つこともできないのか!」
軍事訓練が始まって2日が経ち、みんなは李教官と張教官にもだいぶ慣れてきていた。
結局のところ学生なので、みんな明るくて冗談を言うのが好きだった。
そこで誰かが口を開いた。「教官、これ本当に難しいんです。私たちプロじゃないし、どうやってきちんと歩けるんですか?」
李教官:「……俺が部隊に入ったばかりの頃も、プロの兵士じゃなかったが、どうにかして上手く歩けるようになった。お前にはできないのか?」