「先輩の席じゃないですか?」
その考えが浮かんだ瞬間、先輩の声が聞こえた。「于達、防いだわね!」
于達:「…………」
彼は固く首を動かし、後ろに立っている先輩を見た。他のメンバーも集まってきて、「于達、すごいじゃない!素晴らしい!」
「マジやばい!」
「こんなトップレベルのハッカーを防げるなんて、信じられない!」
「……」
様々な称賛の声が聞こえ、于達は一瞬ぼんやりしたが、彼の視線は最後列の先輩の席に落ちた。
そこには赤髪の少女が座っており、霞がかかったような瞳で彼を見つめていた。
少女の清冷で美しい顔には、波一つない平静さがあった。
彼女だ。
Xは彼女だ!
この考えに、于達は急に立ち上がり、みんなに告げようとした。これは自分の功績ではなく、薛夕のものだと。しかし少女が突然指を唇に当て、静かにするよう合図をした。
于達の言葉は喉に詰まり、彼女をじっと見つめた。
于達の様子の変化に、他の人も気付いた。
彼の視線を追って、先輩も薛夕を見た。以前の于達とこの後輩との争いを思い出し、薛夕の前に歩み寄って、小声で尋ねた。「後輩、本当にファイアウォールを最適化したの?」
薛夕は淡々と頷いた。「はい。」
彼女は先ほどの画面を切り替え、ファイアウォールの最適化に戻り、立ち上がって冷淡に言った。「最適化は完了しました。私は先に失礼します。」
彼女は于達を一瞥し、功績と名声を深く秘めたまま、静かに外へ向かった。
彼女の姿が部屋から消えるまで、于達はようやく我に返った。
彼は直接先輩のパソコンの前に駆け寄り、薛夕の最適化案を見た。
見れば見るほど、彼は興奮した。
先輩は彼の様子を見て、心配そうに尋ねた。「どう?後輩の仕事は十分じゃない?于達、言っておくけど、後輩が手伝ってくれただけでも十分なんだから、変なことしないでよ……」
言葉が終わらないうちに、于達が画面を食い入るように見つめているのが見えた。
十分どころか……これは素晴らしすぎる!!
ファイアウォールの脆弱性を全て見つけ出していた——というより、彼女は既に知っていたのだろう。以前に彼らのファイアウォールを突破したことがあるのだから。そして今、それらは全て修正され、アルゴリズムも最適化されていた。