第513話 現場を押さえられた！

駐車場は比較的静かで、向淮の携帯電話の音量が小さかったにもかかわらず、錢鑫と陸超に聞こえてしまった。

二人は反射的に振り向き、後部座席の方へ歩いてきた。

先ほどのキスがあまりにも激しかったため、携帯電話が落ちてしまい、すぐには拾えず、通話を切ることもできず、薛夕は焦っていた。

二人が近づいてくるのを見て、彼女は向淮のシャツを掴み、頭を中に潜り込ませた。潜り込む前に、向淮を睨みつけながら言った：「私だとは言わないで！」

向淮：！！！

彼は自然に薛夕を抱きしめた。

そのとき、錢鑫と陸超が後部座席に到着し、窓ガラス越しに中の様子を見て、驚いて尋ねた：「ボ、ボス？」

向淮は咳払いをして、少し掠れた声で「うん」と返事をした。

錢鑫は車内の状況に気付かず、お人好しらしく呆然と尋ねた：「ここで何をしているんですか？」

「……」

向淮は少し間を置いて答えた：「寝ている」

錢鑫：？？

彼は呆然とした：「中には寝る場所があるじゃないですか？なぜここまで来たんですか？」

向淮：「……うん、ここが快適だから」

「……」

錢鑫は呆れた：「後部座席が快適？もしかしてボスの車が特別快適なんですか？私も試してみたい！」

そう言って、車のドアを開けようとした。

しかし、ドアに触れる前に、向淮から鋭い視線が飛んできた：「消えろ！」

錢鑫はすぐに一歩後退し、もう無茶はできなくなった。つぶやいた：「ボスってケチですね、後部座席で寝るのも許してくれない」

傍らの陸超：「…………」

賢い陸超は、すでに後部座席の異変に気付いていた。特にボスの隣にある置き場所に困った細くて白い長い脚、これは明らかに女性のものだ！

陸超は向淮を見つめ、しばらくしてから口を開いた：「ボス、お休みを続けてください。私たち、私たちは先に行きます！」

そう言って錢鑫を引っ張って横に移動した。

道中、陸超は目を見開いて言い出した：「錢鑫、ボスが夕さんを裏切ったらどうしよう？」

錢鑫：？？どこが裏切ったの？

陸超は彼に説明する気も起きなかった：「私が見たんだ、ボスが女性と一緒にいるのを！」

錢鑫：「その人が奥さんかもしれないじゃない？」