于達は目を細めて「社長、どういう意味ですか?」
薛夕は顧雲卿を見つめながら、ゆっくりと言った。「実は、この証拠を見つけられたのは、あなたのおかげです」
顧雲卿は隣で聞いていて戸惑い、「どういうこと?」と尋ねた。
薛夕は口を開いた。「昨日、あなたが于達を虐待した時の動画で、于達が一言言ったわ」
今日は薛夕が一番多く話した日だった。彼女は頭の中で言葉を整理してから、ゆっくりと話し始めた。「彼のその一言、口の動きを比較して分かったのは、グリーンアローになりたいと言っていたことよ」
皆は驚いた。
于達も緊張した様子で「それがどうしたんだ?誰だって、ヒーローになる夢くらいあるだろう?」
薛夕は頷いた。「あなたは以前、アイアンマンが好きだと言っていたのに、後でグリーンアローに変えた。当時は理解できなかったけど、後で調べてみて、その違いが分かった。アイアンマンは正義の組織の一員。でもグリーンアローは、独自に悪を懲らしめ、復讐を果たす存在」
于達は崩壊しそうな様子で「何を言い出すんだ?これは方方がやったことだ。こんな単純な事件を、なぜそこまで複雑にするんだ!」
薛夕は目を伏せた。「実は事件発生後、ずっと不思議に思っていたの。方方が劉昭を屋上から突き落とした時と、誰かが直接劉昭を突き落とした場合では、地面までの落下距離が合わないはず。私が計算したところ、0.5メートルの誤差があった。この誤差は、方方が力任せに劉昭を前に押し出せば説明がつく。でも、方方は透明化以外は普通の能力しか持っていない」
人を持ち上げて投げ出すのと、直接押すのとでは、必要な力が違う。
事件発生からずっと、この疑問は残っていた。ただ、誤差が小さすぎて、薛夕は気にかけてはいたものの、重要視はしていなかった。
今、彼女は顔を上げて「だから昨夜、あの日の監視カメラの映像をもう一度復元してみた」と言った。
その一言で、皆は凍りついた。
于達の顔も暗くなり、「何、何を言っているんだ?」
薛夕はUSBメモリを取り出し、景飛が急いでパソコンを渡してきた。薛夕はUSBを差し込み、最初の動画を開いた。
映像は赤外線で判別されたもので、方方が劉昭を連れて屋上に上がり、屋上の端で激しく脅す様子が映っていた。劉昭は空中で手をばたつかせ、そして落下した。