第579章 夕さんの本当の遺伝子比率!

目の前の男は椅子に座り、顔には仮面を付け、全身を隠すように黒いマントを纏っていた。

バックステージは照明が消えており、窓もない場所だったため、真昼でも暗闇に包まれていた。そのため、彼の姿はより一層見えづらく、ただ背中を丸めているのが見えるだけで、年齢は...少し高めなのだろうか?

薛夕は少し疑問を感じながら尋ねた。「全能スーパースター先生?」

「ああ、私だ」

特殊な加工を施されたような声が仮面の後ろから聞こえてきた。低い声で、電流のような機械音が混ざっていた。

一般人には耳障りに聞こえるかもしれないその声だが、薛夕には親しみを感じた。一年の付き合いで、これが初めての対面だった。

普段は平静な彼女の感情に波が立ち、もう一歩前に進んで尋ねた。「先生、ここでお仕事をされているんですか?」

向淮は「...ああ」と答えた。

薛夕はさらに一歩前に進み、その姿をよく見ようとしたが、相手は仮面を付けており、黒い瞳だけが見える状態で、それ以外は何も分からなかった。

彼女は不思議そうに尋ねた。「なぜ仮面を付けているんですか?」

向淮は咳払いをして、気まずさを隠しながら答えた。「ん、醜いからだ。君を驚かせたくなくてね」

薛夕は一瞬止まり、真剣な様子で慰めた。「容姿は親から与えられたものです。先生、私はそんな表面的なことで判断したりしません」

傍らにいた景飛は「...」

ボス、あなたが醜いなら、私たちは人前に出られませんよ!

しかし向淮は少しも動揺せず、頷いた。「うん、君は素晴らしい」

褒められて、薛夕は心の中で喜びを感じた。彼女は微笑んでから、続けて言った。「先生、私が特殊部門に入れたのは、先生が話を通してくださったんですよね。それと、サークルのことも、ありがとうございます」

薛夕は早くから気付いていた。特殊部門の中で、彼女は異常に大きな権限を持っているようだった。景飛が便宜を図ってくれることの他にも、すべてのことが順調すぎるほどに進んでいた。まるで誰かに全て手配されているかのように。

そしてサークルの五人について、最終的に殺人の罪は無かったものの、これまでの行為は法律の限界に触れるものであり、規定では必ず投獄されるはずだった。

しかし今、彼らは法廷で即時釈放された。