第607章 わがままな白

秦爽は呆然となった。ここで身分がばれるとは思わなかった。慌てて口罩を付け、手を振った。「違います、違います、私は...」

言葉が終わらないうちに、豆豆が口を開いた。「あなたが早早でなければ、どうして私が呆豆ちゃんと呼ばれているのを知っているの！」

秦爽：「…………」

秦爽は黙って呆豆ちゃんを見つめ、もう隠せないと分かり、ため息をついた。そして周りを見回してから、最後に口に指を当てて「誰にも言わないでね！」というジェスチャーをした。

呆豆ちゃんはもう焦りきっていた。「早早、あなた、あなた本当に馬鹿なの！誰にも言わないって、本当に許昕瑤があなたのふりをして、お兄さんのために尽くした功績を受け取らせるつもりなの？！」

秦爽は困惑した。「何？」

許昕瑤とどういう関係があるの？

豆豆は彼女のこの様子を見て、まさに天皇より臣下の方が焦っているという状態で、叫んだ。「みんな許昕瑤があなただと言っていて、岑白は彼女を支持すべきだって。許昕瑤は今、あなたよりずっと票数が多いのよ。それもあなたの功績にあやかったからなの！」

秦爽：？

彼女は呆然とした。

「優等生が来た」の放送以来、両親に心を深く傷つけられた彼女は、もう二度と携帯電話に触れなかった。まるで外界と繋がるこのツールに触れなければ、トレーニングキャンプで安定した生活を送り続けられると思っていたかのように。

こんなことが起きるなんて、どうしても想像できなかった！

秦爽は唇を噛んで、最初の反応は「じゃあ、お兄さんが私を支持したら、きっと非難されるわ！」だった。

長年ファン界隈に身を置いていた彼女は、ファン界隈のルールと掟をよく知っていた。

豆豆は彼女の最初の反応がまだ岑白のことだったとは思わず、なぜか突然心の中に感動が湧き上がった。

推し活。

二文字で言うのは簡単だけど、実行するのは本当に難しい。

みんな誰かを好きになるのは自発的なことだけど、心に手を当てて問うてみれば、早早のようにできる人が何人いるだろう？問題に直面したとき、みんな最初に自分のことを考えてしまう。

以前は、早早がこれで人気を維持して、お金を稼いでいるという人もいた。

みんなも疑っていた。早早は決してイベントに顔を出さず、ただお金で支援するだけ。本当にお兄さんのことを愛しているのかって。

でも今、彼女は分かった。