第649章 善人か悪人か？

空はすでに暗くなっていた。

目の前には郊外の一軒家が建っていた。

この住宅地は入居したばかりで、入居率が低く、周囲の家々はほとんどまだ内装工事中で、がらんとしていた。景飛たちに囲まれているこの一軒だけが、中に明かりが灯っていた。

薛夕は眉をひそめて尋ねた。「これは誰の家なの？」

景飛が答えた。「調べたところ、馮省身の家です。」

馮先生？

薛夕が少し驚いていると、景飛が話し始めた。「今、季司霖と馮教授が中にいます。季司霖が馮教授を人質に取っていて、我々は突入できない状況です。夕さん、あなたは季司霖と知り合いですよね。説得してください。人質を解放して、すぐに投降するように。彼が犯した罪なら、せいぜい3、4年の刑期です。こんな形で共倒れになる必要はありません。」

季司霖は何らかの手段で、李學磊のプロジェクトに関わる数学科の人々を精神的に衰弱させただけだった。確かに傷害罪には当たるが、罪は重くない。超能力者に対する法律が厳しくても、せいぜい3、4年の懲役だろう。

それに、李學磊たちがあまりにも横暴だったため、季司霖の行動も鬱憤を晴らすためだった。小堅物さんの下で減刑を得るのは難しいかもしれないが、話し合いの余地がないわけではない。人質を取って逃亡するなんて、その罪の方がずっと重いのだ。

薛夕は事の重大さを理解し、すぐに携帯を取り出して季司霖に電話をかけた。

しかし電話がつながる前に、突然家の中から女性の悲鳴が聞こえた。「馮教授！！」

景飛は一瞬固まり、すぐに緊張した様子で言った。「馮教授の家政婦です！馮教授に何かあったに違いない！」

もはや他のことは考えられず、手を振って「突入！」と命じた。

他の超能力者たちは迷彩服を着て、まるで猛獣のような速さで突進していった。

薛夕は家政婦が恐怖の叫び声を上げた瞬間から、すでに別荘に向かって走り出していた。

しかし、彼女は超能力者たちほど速く走れず、玄関に到着した時には、他の者たちがすでに家全体を包囲していた。

扉は大きく開かれ、中では超能力者たちが季司霖の行方を探して分散していたが、部屋の中に彼の姿はなかった。

馮省身は床に倒れていた。

その傍らには椅子に縛り付けられた家政婦が立っており、馮省身を見つめながら大きく息を吐いていた。「季せんせいです、彼が馮教授を気絶させたんです！」