向淮がそう言うと、ニコラスは立ち止まった。
彼は目を細め、ゆっくりと口を開いた。「なぜだめなんだ?」
向淮は皮肉っぽく笑いながら、彼を一瞥した。
ニコラスは顎を引き締めた。「向、まさか彼女があの人なのか?」
向淮は何も言わず、体を反転させ、ニコラスに背を向けた。
ニコラスは彼の側に寄り、手を伸ばして彼を起こそうとした。「向、寝るな、起きて説明してくれ。君の彼女の異能は一体何なんだ?安心してくれ、俺たちの仲だ、絶対に秘密は守る。」
しかし向淮は最後まで口を開かなかった。
ニコラスだけが暗闇の中に取り残された。
彼は焚き火をかき回しながら、その光が彼の顔を照らし、明滅する中で、彼の眼差しは深遠になった。彼は振り返って、横たわる向淮を見つめた。
彼が眠っていないことは分かっていた。ただ自分に構いたくないから、寝たふりをしているだけだ。でも、どうすることもできない。