第676章 秦爽の代償

鄭直は少し驚いて、再び口を開いた。「黙らないぞ！」

しかし、まだ声が出なかった。彼は戸惑いながら自分の喉に手を当て、話そうとした時、喉の振動ははっきりと感じられたのに、なぜ声が出ないのだろう？

これは一体どういうことだ？

彼は自分の喉を指差し、緊張した様子で景飛を見つめ、彼の肩を叩いた。もはやモゴモゴとした声すら出せなくなっていた。

景飛はその様子を見て、戸惑いながら秦爽を見た。「お前の仕業か？」

秦爽は呆然とした。

彼女は急に我に返り、慌てて手を振った。「違います！」

その言葉が出た途端、鄭直の声が戻った。「なんで話せなくなったんだ？俺...あれ、話せるようになった？さっきは一体何だったんだ？」

彼も戸惑いながら秦爽を見た。「お前の仕業だろう！」

秦爽は緊張して拳を握りしめ、いつもの鋭い目つきで顎を上げ、杏色の目を見開いて、強い口調で、かすかな心虚さを含んで言った。「私に何の関係があるっていうの？私は妖怪じゃないし、そんな妖術なんて使えるわけないでしょう？きっとあなたが喋りすぎて喉を痛めただけよ！あまり喋らない方がいいわ。舌を噛んでまた話せなくなったら大変でしょう！」

鄭直：「……」

景飛：「……」

二人は目を合わせた後、景飛も鄭直を見た。「喉の調子が悪いのか？」

昨日山で大きな戦いがあり、その後薛夕が気を失い、二人とも心配で眠れず、一晩中起きていたのだから、のぼせても当然だろう。

鄭直も戸惑いながら口を開いた。「たぶんそうかも？」

二人が自分を疑わなくなったのを見て、秦爽はほっとした。彼女は急いで口を開いた。「夕さん、あの、大丈夫なら私先に行くわ。私はまだ岑...」

一文字言った後、警戒するように景飛と鄭直を見て、言い直した。「私はまだ主人との約束があるの。」

薛夕は彼女を見つめた。

いつもの活発なおしゃべりさんの様子は消え、代わりに精神的に疲れ果て、目の下にクマができ、明らかに心配事があって休めていない様子だった。

今日突然自分を訪ねてきたのは、何か用があるのだろう？

しかし景飛と鄭直がいる中で、彼女も心事を打ち明ける気分ではなさそうだった。そこで薛夕は頷いた。「...わかった。」

秦爽はバッグを手に取り、鄭直と景飛の傍らを通り過ぎた。