向淮はもうキスしようとしていたのに、この瞬間に急ブレーキをかけた!
少女の唇に近づこうとしていた顔が、瞬時に上がり、さらに彼は素早く手を伸ばして、薛夕のベッドサイドテーブルから飲み物を取り、そしてさりげなく自分の席に戻って、やっと説明した:「物を取りに行っただけだ。」
物を取る?
薛晟は信じなかった!
彼は娘を見たが、娘は茫然とした表情で、顔色は平静そのもので、まるで今キスをしたばかり、あるいはキスしようとしていた様子は全くなかった。
えっ?
もしかして自分が小向くんを誤解していたのか?
彼が考え込んでいる時、薛夕が口を開いた:「お父さん、どうしてここにいるの?」
薛晟は答えた:「ああ、私も映画を見に来たんだ。こんなに偶然出会ったんだから、一緒に見よう。」
そう言って彼は薛夕の隣に行き、その大きなソファーに座った。
向淮:??
薛夕:???
個室をより快適にするため、ここの本革ソファーは全て大きめで、三人座っても全く問題なかった。
薛晟は向淮と薛夕の方を振り返って言った:「君たちは好きにすればいい、私がいないものと思って。」
向淮:「…………」
個室の中で誰も話さなくなり、雰囲気が少し変になった。
そしてこの映画が一体何を上映していたのか、三人とも全く分からなかった。
映画がようやく終わり、三人は退場し、道を歩きながら、薛晟は意図的に向淮を試した:「この映画、どう思う?」
向淮:?
彼は後半全然見ていなかったのに?
しかし義父がこんな風に見ているということは、きっと試しているのだろう。もし彼が真剣に見ていなかったとしたら、それは何か企んでいたということになる。
そこで、向淮は咳払いをして、試すように口を開いた:「この映画は前半とても甘くて、中盤から切なくなって……」
彼はそこまでしか見ていなかったが、エンディングについては……
「でも、エンディングは少し良くなかったですね。」
彼は試すように薛晟を見ながら、平然と嘘をついた:「ああ、どうして二人は結ばれなかったんでしょうね?でも人生には多くの遺憾があるものです。義父はどう思われますか?」
結ばれなかった?
薛晟は困惑した。彼も映画を見ていなかった。二人のことばかり気にしていたが、時々チラッと見た時、後半で女主人公が墓地に行ったような気がする?