第786話

薛夕の体は一瞬で硬直した。

彼女は下を向き、信じられない思いで腰に置かれた手を見つめた。

その大きな手の平は熱く、今まさに彼女の腰を不作法に握り、薛夕は蒸気が立ち昇るような熱さを感じていた。

彼女の頬は一瞬で真っ赤になり、抵抗しようとしたが、足に力が入らず、突然力が抜けてしまった。

そして、その大きな手がセーターをめくり上げ、ゆっくりと上へと這い上がってくるのを感じた……

薛夕は唾を飲み込んだ。

彼女は必死に思い出そうとした。小説の中の細かい描写で、主人公の男性がこうする時、ヒロインはどんな反応をしていたっけ?

確か……

ヒロインはそこに横たわり、色っぽい目つきで「お兄さま、しましょうか?」と尋ねるんだった。

薛夕:「…………」

この言葉はあまりにも恥ずかしすぎる。

とても口に出せない。

咳。

それに、何をするって!

ヒロインがこの言葉を言った後に起こることを想像しただけで、薛夕はさらに緊張してしまい、向淮の手を押しのけた。「あなた……」

「シーッ、動かないで」向淮は別の手の指を彼女の唇に当て、薛夕を驚かせた。そして向淮は低く笑いながら言った。「台無しになるようなことを言わないでほしいから」

薛夕:「…………」

こんなに彼女を嫌がっているの?

何か言おうとした瞬間、男性は突然頭を下げ、直接彼女の唇を塞いでしまい、もう何も言えなくなってしまった。

薛夕は少し呆然としていた。

小説の中でこの後に起こることを思い出し、薛夕は瞬きをした。なぜか、心の中にほんの少しの恐れと、ほんの少しの期待、そしてほんの少しの恥ずかしさが混ざっていた。

考えている間に、体が冷たくなり、男性の長い指が既に彼女の服を開き、中のピンク色の……を露わにしていることに気付いた。

ピンク色!

薛夕は目を大きく見開いた。

実は彼女はいつも白か黒を着ていたのに、このピンクは葉儷が買ってきて、一度は着るようにと言われたもの。でも、こんな少女っぽいものが、どうして薛夕に似合うはずがある?

この考えが浮かんだ瞬間、薛夕は急いで手を伸ばし、向淮の悪戯を続ける手を掴んだ。

向淮の動きが止まった。