第787章 春の夢は跡形もなく

「…………」

部屋の中に不気味な静けさが漂った。

薛夕はそこに座り、自分でも頭の中が真っ白になっているのを感じた。この感覚は見慣れないものだった。幼い頃から頭の回転が速く、まるで大きな空っぽの倉庫のように、あらゆる知識を詰め込みたがり、時には一度に複数のことをこなしても、頭が追いつかないと感じたことは一度もなかったのだから。

しかし今、彼女はまるでフリーズしたように、固まってしまった。この気まずい状況を和らげようと何か言おうとしても、何を言えばいいのか分からなかった。

途方に暮れ、どうすればいいのか分からなくなった時、「くすっ」という笑い声が聞こえ、続いて男性がゆっくりと口を開いた。「坊や、お正月が過ぎたら、君の誕生日だね」

薛夕：？

彼女は意味が分からず「え？」と返した。

「誕生日が過ぎたら、君は二十歳になる。大人になれるんだよ」

薛夕：「……」

薛夕：！！

彼女は突然その言葉の意味を理解し、顔を赤らめた。何か言おうとした瞬間、目を大きく開いた。

窓の外は明るく、一筋の陽光が差し込んで彼女の顔に当たり、まだぼんやりとした意識の中で現実に戻れずにいた。

しばらくして、やっと我に返った。

なんだ...昨夜のことは全て夢だったのか！

でも、なぜ突然こんな夢を見たのだろう？それにあまりにも生々しすぎる。夢の中で男性が話す時の息遣い、彼の大きな手が自分の腰に触れた時の温もり、指先の粗い感触まで...

そう考えると、夢の中の細部が目の前に浮かび、薛夕は急いで顔を覆った。

いけない。

深く息を吸い、布団をめくってベッドから降りた。

部屋の暖房が十分に効いていたので、素足のまま洗面所に行き、その後ドアを開けた。ドアを開けると、まだ閉まっていない主寝室から会話が聞こえてきた：

薛晟：「疲れた、もう少し寝かせてくれ」

葉儷：「どうして疲れているの？昨日は10時に寝たじゃない。言いなさい、夜中に何か悪さをしていたんでしょう！」

薛晟：「...悪さなんてしてない。小向くんが夕夕の部屋に忍び込むんじゃないかと心配で、昨夜は眠らずに夕夕の部屋の前で見張っていただけだ。今は疲れ果てているんだ。邪魔しないでくれ、少し仮眠を取って、それから実家に行くから」

葉儷：「…………」