第793章 範師匠！

院長は二人が自分を見ていることに気づき、まずはため息をつき、次にキノコと卵の炒め物を一口食べてから、「食べながら話しましょう」と言った。

向淮は頷いた。

薛夕も二口ほど食べた。

しかし、二人は依然として彼女を見つめていたため、院長は仕方なく口を開いた。「実は、私たちが夕夕を引き取ったのは、誰かが連れてきたからなんです。」

「誰が？」

向淮は素早く反応して尋ねた。

院長は首を振った。「分かりません。見知らぬ人でした。19年前くらいでしょうか。大雨の日に、私がまだ孤児院の教師で夜勤をしていた時、外で赤ちゃんの泣き声が聞こえたので、ドアを開けたら、怪しい人影が逃げていくのが見えました。あなたは玄関の外に置かれていて、とても丁寧に包まれていて、雨にも濡れていませんでした。その人があなたのことを大切に扱っていたのは明らかでした。」

彼女は話しながら薛夕を見つめた。「あなたを抱き上げたとき、包んでいた毛布がとても良い質のもので、中にはあなたの名前と生年月日が書かれていました。すぐに警察に通報しましたが、当時は孤児院の入り口に監視カメラもなく、周りも寂しい場所でした。警察も長く捜査しましたが、あなたを連れてきた人は見つからず、最終的にあなたを孤児院で引き取ることになりました。」

院長はため息をついた。「でも後になって、あなたが特別な存在だということに気づき始めたんです。」

薛夕は躊躇いながら尋ねた。「どうやって気づいたんですか？」

院長は話し始めた。「あなたを孤児院に連れてきた時、粉ミルクやおむつなど、全て高級ブランドのものが揃っていました。実の両親が残していったものだろうと思って使っていました。これを使い切ったら、もうこんな良い粉ミルクは飲めないだろうなと思っていたんですが、粉ミルクがなくなる前に、匿名で孤児院に物資の寄付があったんです。」

院長は続けた。「その匿名の寄付者とはネット上で知り合い、寄付された物は使用のみ許可され、売買は禁止されていました。当時はあまり深く考えませんでしたが、寄付された粉ミルクとおむつが届いた時、あなたが使っていたものと同じブランドだと気づき、この人はきっとあなたのために寄付しているんだと分かりました。」

薛夕は目を見開いた。「その人の連絡先はまだありますか？」