向淮は目立たない人物の抽象画の一つを指差して、「これは、XXXが描いたものだ」と言った。
薛夕が人名に敏感でないのを見て、彼は別の言い方に切り替えた。「この絵は、20年前のオークションで2000万という高値で落札されたんだ」
薛夕:!!!
2000万?
これで孤児院を200個も買えるじゃない!!
彼女は口角を引きつらせながら、向淮が別の絵を指差すのを見た。「この絵も数千万の価値があるんだ。しかも、あるお金持ちがこの絵の所有者に5000万で買い取りたいと申し出たこともある」
「……」
薛夕は目を見開いて、向淮について廊下の端から端まで歩きながら、一見何の変哲もなく壁に掛けられた絵の価値について説明を聞き、信じられない思いでいた。
端に掛けられていて、日光に当たって色あせてしまった古びた絵が、数千万もの価値があるなんて?
向淮はさらに感心したように舌打ちをした。
ここにある絵は、どれを取っても博物館に展示できるレベルのものだった。
財神グループが子供たちを育てるのに、こんな贅沢な方法を取っているなんて!
だから子供たちは何を見ても驚かないし、知識も豊富なんだ。確かに可哀想そうに見えて、孤児院出身だと言っているけど、これは完全に姫様として育てられているようなものじゃないか?
薛夕の部屋の入り口まで来て、中を覗き込んだ。
この部屋は薛夕が出て行った後、誰も住んでいないようで、中は昔のままだった。一つのスイートルームだが、一見普通に見えるベッドマットレスは、世界的に有名なブランドの最高級オーダーメイドのものだった。
あの地味そうな小さなソファは、実は本革製で、座り心地は抜群だった。
向淮:!
そのとき、外から急ぎ足の音が聞こえ、続いて優しい声が聞こえてきた。「夕夕、帰ってきたの?」
薛夕が振り返ると、優しい院長先生が入り口に立って、喜びの表情を浮かべながら微笑んでいた。
旧知の人を見て、薛夕も嬉しくなり、頷いた。
院長はすぐに話し始めた。「お昼ご飯は食べた?ちょうど良いタイミングで帰ってきたわね!食堂の范おじさんを覚えてる?彼は一度退職したんだけど、今日用事があって戻ってきて、あなたが来たと聞いて、食堂で料理を作ってくれているのよ。あなた、本当に運がいいわ。さあ、食事に行きましょう!」