「向淮、何をしているの?!」
季司霖は怒鳴った。「彼女の超能力を奪ったら、彼女に何が残るというんだ?!」
吳途も驚愕した。
超能力を失った姫様を、彼らはどうやって守ればいいというのか?!
しかも!
彼と季司霖は目を合わせ、揃って向淮を見つめた。
薛夕は今、鄭直を殺した疑いがまだ晴れていない。この時に超能力を奪われたら、彼女は無力な弱者になってしまう。そうなれば特殊部門の思いのままになってしまう!
二人が心配していると、何かを思いついたように前に飛び出し、この奪取を阻止しようとした。
しかし近づく前に、強力な波動に邪魔されて二歩後退し、やっと体勢を立て直した。
彼らは驚愕して向淮を見つめた……
薛夕は目を閉じ、彼の手を握りしめ、彼の思うがままにされていた。
向淮は二人を見て、突然冷笑した。「お前たちは、私が小さな友人を見つけたのに、すぐに殺さなかったのは何のためだと思う?」
何のため?
向淮は目を伏せた。「今日のためだ。彼女が持つすべての異能のためだ。」
この言葉と共に、奪取が完了した。
彼はためらうことなく薛夕を景飛に投げ渡し、そして突然空中に浮かび上がった!
すべての異能を奪われた薛夕は、ようやく理性を取り戻し始めていた。
彼女が目を開けたとき、景飛に支えられていたが、向淮の姿をはっきりと見た。
これは……景飛の「飛行」能力!
彼は今、空中に立ち、高みから見下ろしながらゆっくりと言った。「私の奪取能力は、同時に五つの超能力しか奪えない。一つを超えると、一つを捨てなければならない。だから、私は複製ではなく、最強でもない。しかし今は……薛夕から一つの異能を奪っただけで、これほど多くのことができるようになった……これが私の力であり、私の目的だ!」
「そしてお前は……」向淮は目を伏せ、薛夕を見た。「私にとっては、ただの道具に過ぎない!」
道具……
薛夕の瞳孔が大きく開いた。「向淮!あなた、私を騙したのね!」
向淮はその言葉に答えず、ただ淡々と言った。「覚えているか、私はかつてお前に言ったはずだ。超能力者の世界では、誰も信じるなと。」
彼は視線をその場にいる全員に向け、口を開いた。「お前たちに秘密を一つ教えよう。」