第879章 ハゲタカさん

「向淮、何をしているの?!」

季司霖は怒鳴った。「彼女の超能力を奪ったら、彼女に何が残るというんだ?!」

吳途も驚愕した。

超能力を失った姫様を、彼らはどうやって守ればいいというのか?!

しかも!

彼と季司霖は目を合わせ、揃って向淮を見つめた。

薛夕は今、鄭直を殺した疑いがまだ晴れていない。この時に超能力を奪われたら、彼女は無力な弱者になってしまう。そうなれば特殊部門の思いのままになってしまう!

二人が心配していると、何かを思いついたように前に飛び出し、この奪取を阻止しようとした。

しかし近づく前に、強力な波動に邪魔されて二歩後退し、やっと体勢を立て直した。

彼らは驚愕して向淮を見つめた……

薛夕は目を閉じ、彼の手を握りしめ、彼の思うがままにされていた。

向淮は二人を見て、突然冷笑した。「お前たちは、私が小さな友人を見つけたのに、すぐに殺さなかったのは何のためだと思う?」

何のため?

向淮は目を伏せた。「今日のためだ。彼女が持つすべての異能のためだ。」

この言葉と共に、奪取が完了した。

彼はためらうことなく薛夕を景飛に投げ渡し、そして突然空中に浮かび上がった!

すべての異能を奪われた薛夕は、ようやく理性を取り戻し始めていた。

彼女が目を開けたとき、景飛に支えられていたが、向淮の姿をはっきりと見た。

これは……景飛の「飛行」能力!

彼は今、空中に立ち、高みから見下ろしながらゆっくりと言った。「私の奪取能力は、同時に五つの超能力しか奪えない。一つを超えると、一つを捨てなければならない。だから、私は複製ではなく、最強でもない。しかし今は……薛夕から一つの異能を奪っただけで、これほど多くのことができるようになった……これが私の力であり、私の目的だ!」

「そしてお前は……」向淮は目を伏せ、薛夕を見た。「私にとっては、ただの道具に過ぎない!」

道具……

薛夕の瞳孔が大きく開いた。「向淮!あなた、私を騙したのね!」

向淮はその言葉に答えず、ただ淡々と言った。「覚えているか、私はかつてお前に言ったはずだ。超能力者の世界では、誰も信じるなと。」

彼は視線をその場にいる全員に向け、口を開いた。「お前たちに秘密を一つ教えよう。」