第269章 賭けは必要ない

"夏よ、お前の体の傷は。"第一師団長は心配そうに夏天を見つめた。

　　"ふん、お前たち第一師団の奴らは言い訳がうまいな。怖いなら怖いと言えばいいのに、傷だなんて。"花武柳は嘲笑うように言った。前の二戦は負けたが、もはや兵王の称号なんてどうでもよくなっていた。最悪、次の選抜で取り返せばいい。彼がやりたいのは夏天を倒すことだった。蔣天舒から命令されていたのだ、なんとしても部隊内で夏天を始末しろと。

　　彼の命も才能も全て蔣家のものだった。だから蔣天舒から与えられた任務を必ず遂行しなければならなかった。

　　蔣天舒が直接手を下して夏天を始末しないのは、隠門内の勢力に気を遣っているからだと彼は知っていた。そうでなければ、蔣天舒は適当に二人の達人を送り込んで夏天を簡単に始末できたはずだ。

　　しかし、そんなことをすれば蔣天舒は隠門のタブーを犯すことになり、一生隠門から出られなくなってしまう。

　　"蔣少爺、ご安心ください。必ず任務を遂行します。"花武柳は心の中で誓った。

　　千日の兵を養うは一日の用のため。

　　"くだらない話はもういい。この台でいいだろう。"夏天は花武柳を見つめて言った。

　　"夏天、馬鹿なことはやめろ。早く降りてこい。あいつの言うとおりにしろ。"第三旅団長が急いで諭した。ここでは彼と夏天の仲が一番良く、夏天を最初に知った人物でもあった。彼はすでに夏天を自分の部下のように思っていたので、当然夏天に何か起こることを望んでいなかった。

　　"長官、勝ったら酒をおごってくれるんですよね？"夏天は第三旅団長に向かって尋ねた。旅団長が心から彼を心配していることを知っていた。

　　夏天はそういう人間だった。他人が彼に親切にすれば、彼はもっと親切に返す。他人が彼に悪意を向ければ、彼はもっと強い悪意を返す。

　　"降りてこい。酒を飲みに行こう。今回は絶対にピーナッツは食べないぞ。"第三旅団長は眉をひそめて言った。

　　"長官、この試合が終わったら一緒に飲みに行きましょう。でもその前に、奴に我々第一師団にも人がいることを知らせなければなりません。"夏天は言い終わると、花武柳の方を向いて言った。"蔣天舒がお前を俺を殺しに寄越したんだろう？俺が手ごわいってことは教えてくれなかったのか。"

　　"長官、この蔣天舒って誰なんです？"第三旅団長が尋ねた。