夏天は寸歩を瞬時に使い、左手で林冰冰の腰を抱き寄せ、血光が一閃し、二人はその場から消えた。
林冰冰は少し呆然としていた。彼女には何が起きたのか全く分からなかった。まるで夏天の動きによって自分の体が一瞬にして消えたような錯覚を覚えた。
瞬間移動!
しかしこれはあまりにも荒唐無稽だ。人間はあくまでも肉體を持つ存在なのに、どうして瞬間移動のような不可思議なことが起こり得るのか。
「ぼーっとしてどうしたんだ?前に通路があるぞ。ここの提灯が消えていないということは、通気口があるはずだ。中に入って確かめてみよう」夏天は林冰冰の肩を叩きながら言った。
「はい!」林冰冰は少し不思議そうに夏天を見つめた。彼女は夏天が武芸の達人で非常に強いことは知っていたが、今まで夏天がどれほど強いのか分かっていなかった。先ほどの一件で、夏天がさらに測り知れない存在に思えた。