「お前もご飯を食べる必要があるのか」夏天は驚いて白羽を見つめた。彼はずっと白羽のことを俗世を離れたイケメンだと思っていた。
「私だって人間だ。当然食事はする」白羽は夏天に白眼を向けた。
「誤解していたようだ。お前はいつも白い服を着て、まるで仙人のような雰囲気を醸し出しているから、露を飲んで風を食べているのかと思っていた」夏天は白羽をずっと神話のような存在として見ていた。
「勝負するのか?しないなら帰るぞ」白羽は夏天の相手をするのが面倒くさそうだった。
「もちろん勝負する」夏天の漫雲仙歩は進化したばかりで、ちょうど白羽と試してみたいと思っていた。
白羽は華夏一の速さを誇る者と呼ばれており、それは決して誇張ではなかった。夏天はすでにその速さを体験していたが、今は自身の速度も上がっていたので、もう一度白羽と試してみたかった。
白羽も夏天との勝負を楽しんでいた。夏天は年下で、速さも自分に及ばないが、夏天との勝負は好きだった。なぜなら、毎回夏天の成長を見ることができたからだ。
彼には友人が多くなかったが、夏天はその一人だった。
彼の夢は、いつか自分の速さが衛広の剣を超えることだった。
衛広の剣法は驚くほど速く、彼と尹聶は同じ師匠に教えられ、二人とも現在は絕世の達人だった。
しかし尹聶は天下一の剣士と呼ばれていた。
二人は師兄弟だったが、性格は大きく異なっていた。尹聶は寡黙だったが、温かい心を持ち、守るべきものと人がいた。一方衛広は違った。彼の冷たさは殺氣であり、彼にとって世界には友はなく、ただ部下と敵があるだけだった。
白羽は彼の部下の一人だった。
二人は走り始めたが、白羽はすぐに驚いた。夏天の速度が以前の約3倍になっていたからだ。これは単なる初動の爆発力かもしれないが、わずかな進歩ではなく、3倍という驚異的な向上だった。
さらに白羽は、夏天の歩法に血の光が混ざっているのに気付いた。この血の光は見覚えがあった。これは隱蝠が走る時に見せる血の光ではないか?
隱蝠は流沙において彼と同じレベルにいた。
しかし速度も実力も、彼は隱蝠を完全に上回っていた。とはいえ、これは隱蝠が弱いということではない。隱蝠が范追風に勝てないのと同じように、彼が范追風に勝てなくても、普通の玄級後期の達人なら戦えるのだ。