夏天が林冰冰の前に駆け寄った時、林冰冰は驚いた。夏天は彼女の頭部に向かって拳を振り上げたが、拳が林冰冰の頭に当たる直前に力を抜き、そっと頭を撫でた。
「君ね、あまりにも不注意だよ。もう始まってるんだから、私を攻撃して。私を傷つけることを恐れないで」夏天は怪我をしていたが、まだ体力は十分にあった。
「じゃあ、本気で行きます」林冰冰はそう言ったものの、心の中では一線を引いていた。夏天の様子が悪くなれば、すぐに手を引くつもりだった。
林冰冰は変異後、力と速度が全て向上していた。
動き出した瞬間、彼女の拳は夏天に向かって放たれたが、夏天の傷を避けていた。
バン!
夏天は二本の指で軽々と林冰冰の拳を弾き返した。
「私を傷つけることを恐れているの?傷を避けているだけじゃなく、力も随分弱めているね」夏天は真剣に林冰冰を見つめながら続けた。「そんなんじゃ永遠に上達しないよ。全力で、最も効果的だと思う場所を攻撃して。私のことは心配しないで、君が想像しているほど脆くないから」
「でも、あなたの傷が…」林冰冰は依然として夏天の傷を心配していた。
「全力を出さないなら、私は自分で傷を開くよ」夏天は厳しく言った。
「わかりました、気をつけてください」林冰冰は仕方なく頷いた。本当に夏天が自分で傷を開くのではないかと心配だった。彼女は分かっていた、夏天のこの行動は全て彼女のためだということを。だからこそ、夏天の期待を裏切るわけにはいかなかった。
林冰冰は全力で攻撃を開始した。
彼女の速度は速かったが、漫雲仙歩はまさに高速の天敵で、そのため夏天は余裕綽々に見えた。
彼女の力に関しては、夏天はさらに恐れていなかった。正面から攻撃を受けなければ大丈夫だった。ただし、現在の夏天の体で正面から林冰冰の拳を受けたら、それは大変なことになるだろう。
夏天の二本指は毎回軽々と林冰冰の拳を弾き返していた。
「林さん、頭を使って。力だけに頼る者は所詮は無謀者だよ」夏天は注意を促した。林冰冰は力に頼りすぎていたため、夏天に対して何の脅威も与えられなかった。
二人はこのように、一方が攻め、一方が守り、夏天は絶えず指導を続けた。