第304章 背後で操る手!(3更!)

鄧淵嘯は項承東が現れるのを見て、すぐに手を伸ばし、助けを求めて言った。「項さん、助けてください。この若造が藥王谷で騒ぎを起こしているんです...」

言葉が終わらないうちに、葉辰が口を開いた。「さっき警告したはずだ。お前が聞かなかっただけだ」

言い終わると、葉辰は鄧淵嘯の体を踏みつけた。

骨の砕ける音が響いた。

まるですべてが粉々になったかのようだった。

「これからお前は完全な廃人だ!」

この光景を見て、誰もが項承東が怒り出すと思った。

なにしろ葉辰は藥王谷で暴力を振るったのだ。これは太歲の頭上で土を動かすようなものだ!

項承東の性格からすれば、葉辰と朱雅は必ず追い出されるはずだ!

しかし、誰もが予想もしなかったことが起きた。項承東は鄧淵嘯を一瞥すると、側近に命じた。「この者を追い出せ。今後、閩南の鄧家と華夏藥同盟との関係は一切断つ!華夏藥同盟は閩南の鄧家にいかなる醫術の援助も提供しない!」

なんだって!

この言葉に、全員が呆然とした!

項承東は葉辰を処罰するどころか、逆に閩南の鄧家との関係を断ち切った!

さらには鄧淵嘯を藥王谷から追放したのだ!

まるで葉辰に好意を示しているかのようだった!

そしてこの時、当事者である葉辰と朱雅はすでに静かに去っていた!

人々は二人の遠ざかる背中を見つめながら、心の底から震え上がった。

彼らは同時に一つの強い思いを抱いた:

閻魔大王の怒りを買うことはあっても、葉辰の怒りは買うまい!

……

藥王谷の外で。

朱雅は未だ動揺を隠せないまま車に乗り込み、息を荒げていた。

彼女は後ろの葉辰を見つめ、なぜか頬を赤らめた。

英雄は美人に弱いというが、美人もまた英雄に弱いものだ!

藥王谷での出来事だけでも、葉辰の姿は朱雅の心の中で無限に高まっていった!

彼女は紅い唇を軽く噛み、後部座席のこの男を独占したい衝動に駆られた!

彼女は心の中で悔やんだ。夏若雪の前に葉辰と出会えていたらよかったのに。

もしかしたら、あの時もう少し積極的だったら、葉辰の側にいる女性は自分だったかもしれない。

しかし残念ながら、この世界にもしもはないのだ!

彼女にはよくわかっていた。一度藥王谷を離れ、市内に戻ってしまえば、葉辰と二人きりになることはもう不可能だということを。