第55章 葉淇の脱獄計画（2）

この光景を見て、葉淇の心は痛く締め付けられた。

　　彼女はビデオを消し、目を閉じた……

　　翌朝早く、陸厲沉は出かけていった。

　　葉淇は起床後すぐに身支度を整え、病院へ靳浩を見舞いに行った。

　　彼女ははっきりと理解していた。靳浩がこの事件の鍵となる人物であり、靳浩が目覚めさえすれば、すべてはまだ挽回の余地があるのだと。

　　病院に着くと、葉淇は1階で果物と花を少し買い、靳浩の病室を見つけ、ドアを押して入った。

　　靳浩の母親と父親が病室にいて、葉淇を見ると眉をひそめた。「あなたは誰？」

　　葉淇は優しい声で言った。「靳浩のクラスメイトの葉淇です。靳浩が今怪我をしていると聞いて、見舞いに来ました。」

　　靳浩の母親である王雪琴はこの言葉を聞いて、一瞬戸惑った。「あなたが葉淇？私の息子を傷つけた張本人？」

　　彼女は我に返り、怒り狂った。「よくもここに来れたわね？」

　　「おばさま、今日は靳浩を見舞いに来ただけです。悪意はありません！」

　　「あなたが生きているだけで靳浩にとって最大の悪意よ！」

　　もともと靳家の人々は、靳浩が一人の女性のために二人の男に崖から突き落とされたと知って、葉淇に対してかなり批判的だった。

　　それなのに、この葉淇が病院に来て、こっそりと二人の殺人犯を逃がしたのだ。この行為は明らかに靳家への挑戦だった。

　　もし陸家の面子がなければ、彼らはこの葉淇も刑務所に入れていただろう。弁解の機会など全く与えなかったはずだ。

　　王雪琴の顔に怒りの色を見て、葉淇は目を伏せた。「申し訳ありません。ただ靳浩の怪我の具合を知りたかっただけです。」

　　「靳浩の怪我の具合？」王雪琴は嘲るように葉淇を見た。「自分で目がないの？靳浩が今どれほど重傷か見えないの？」

　　「彼は今、体中傷だらけよ。満足した？」

　　「あなたがいなければ、私の靳浩がこんな目に遭うことはなかったのに。」

　　「人間らしい外見をしているのに、こんなにも冷酷な心の持ち主だとは。あの二人の犯人を逃がそうだなんて。」

　　「あなたのような人間が、私の息子に会う資格なんてあるの？」