第185章 あなただけ

席家の屋敷を出る頃には、太陽はすでに西に傾き始めていた。

  席牧白の大きな体が前を歩き、夏星河がその後ろに続いていた。二人の間には沈黙の雰囲気が漂っていた。

  突然、何かを感じたかのように、夏星河が振り返ると、霖ちゃんが別荘の入り口に立ち、静かに彼女を見つめているのが見えた。

  一瞬のうちに、夏星河は彼の表情から名残惜しさの感情を読み取った。

  彼女の心も非常に名残惜しく、できることなら今すぐにでも彼を連れて行きたかった。

  しかし、それはできない……

  彼女は連れて行けないだけでなく、席おじいさまは態度を明確にするために、彼女が子供に会うことさえ許さなかった。

  子供に会いたければ簡単だ。一ヶ月後に結果を出せばいい。

  もし成功しなければ、この先ずっと子供に会うことは難しくなるだろう。

  彼女が大口をたたいて、必ず成功すると言ったのだから。そうであれば、事実に語らせよう。

  成功しなければ、彼らは彼女を簡単には許さないだろう。

  夏星河は成功することについて心配していなかったが、一ヶ月後にやっと子供を連れて行けると思うと、その時間がやや長く感じられた。

  「彼に会いたくなったら私に言ってくれ。彼を連れてきて会わせるから」席牧白の低い声が突然耳元で響いた。

  夏星河は淡々と言った。「結構です」

  仕事に専念するために、彼女も心を鬼にして子供に会わないようにしなければならなかった。そうすれば、心に他の考えを持たずに集中できる。そうでなければ、彼女は毎瞬、彼のことを考えてしまうだろう。

  その思いは断ち切るのが難しい。以前、離婚後、彼女はそれを断ち切るのに長い時間がかかった。

  今は重要な時期だ。彼女は再び子供の影響を受けてはいけない。

  そう考えると、夏星河は目を固く見開き、もはや未練なく振り返った。「行きましょう」

  席牧白は深く彼女を見つめ、何も言わずに彼女のためにドアを開けた。彼女が座った後、彼は反対側に回り、ドアを開けて車に乗り込んだ。

  車はすぐに発進した……

  夏星河はバックミラーを通して、霖ちゃんがまだその場に立っているのを見た。